東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

「自立」促す介護保険法改正案 透けて見える「費用抑制」

在宅で介護を受ける要介護5の女性への訪問リハビリの様子。「自立支援」は重要だが…=神奈川県内で(本文とは直接関係ありません)

写真

 主に二〇一八年度から実施される制度改革が盛り込まれた介護保険関連法改正案が十八日、衆院を通過した。一定以上の所得のある高齢者や現役世代の負担増に比べ注目度は低いものの、要介護者の「自立支援」「重度化防止」施策の推進が明確に打ち出されたのも特徴だ。状態改善を図るのは当然のことのようだが、介護費用抑制の目的も隠れており、本当にサービスが必要な人を介護保険から遠ざけてしまう、と危ぶむ声も出ている。 (白鳥龍也)

 埼玉県内で一人暮らしをする七十代の男性は、脳梗塞で右半身にまひが残り、要支援2の認定を受けている。地元自治体は、生活習慣や運動の指導で、最終的に介護保険利用からの“卒業”を目指す「自立支援型ケアマネジメント」を掲げる。男性も退院後、ケアマネジャーの勧めでリハビリのため介護施設に毎週通い始めた。

 ただ、自宅の掃除や買い物には不自由し、たびたびケアマネジャーに生活援助のヘルパー派遣を頼んだ。しかし、ケアマネからは「買い物に行けるようにリハビリを頑張って」と言われるだけ。さらに自宅には、体に良い食べ物や行動目標が細かく書かれた表が張り出され、通所に加えて毎週の訪問リハビリも受けるようになった。

 そうした指導に従う生活を二〜三年続けたが、体は思うように回復せず、この間、仕方なくヘルパーを自費で利用していた。

 男性は現在、障害福祉サービスでの訪問介護を受けるようになった。ただ当時を振り返り、「こんなに頑張っているのにまだ(自立の努力を)やれというのか。好きな物も自由に食べたいし、行政はもう自分に構わないでほしい」と腹立たしかったという。

 国や埼玉県は、こうしたやり方を他の自治体に広めようとしている。これに疑問を感じ、男性から話を聞いた同県新座市のケアマネジャー鉄(てつ)宏之さんは「行政や専門職が自立を押しつけてはならない。本人の生き方を尊重した支援が本来のわれわれの仕事だ」と感想を漏らす。

 そもそも、介護保険法は第一条で「自立した日常生活を営むことができるよう…」と目的をうたう。そこから「自立支援介護」の理念が誕生。全国には、徹底した生活管理を基本とするこの理念の実践で、入居者の「おむつゼロ」を目指す特別養護老人ホームも多い。

 さらに、今回の法案で国は市町村の役割について、要介護状態の軽減とともに介護給付費の「適正化」への努力を自立支援施策と定義。適正化とは事実上、「抑制」を意味する。成果をあげた場合、交付金を出すことを盛り込んだ。基準や金額など詳細は未定だが、「成功報酬」の導入だ。東京都品川区、名古屋市といった自治体が、利用者の要介護度や心身の状態の改善に応じ、介護事業所に独自の奨励金や報酬加算を与えているのをまねた形だ。

 国の方針について、福祉ジャーナリストの浅川澄一さんは「介護保険を使わないことがいいこととなったら、家族介護から社会的介護への転換を宣言した介護保険法の本旨に反する。一時的に自立となっても、人間は必ずまた衰える。その際にサービスを利用しにくい雰囲気をつくり出すのは間違いだ」と指摘。鉄さんも「的確な介護支援があれば、保険サービス外の地域の力を活用するなどで、給付抑制と個人の尊厳の両立を図ることができるはずだ」と強調する。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報



ピックアップ
Recommended by