東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<イクメンブルー>(上) 「理想のパパ」でいたいけど…

写真

 「イクメン」と呼ばれる育児や家事に積極的なパパたち。その言葉が社会に定着するにつれ、「もっとできるはず」と妻からの期待値が上昇したという家庭も。夫もそれに応えようとするが、理想と現実の違いに悩み、ストレスをためてしまう人も出てきた。「イクメンブルー」という言葉も聞かれるようになってきた昨今、そんなパパたちの思いを聞いた。 (寺本康弘)

 東京都の多摩地域に住む会社員男性(39)は「娘の笑顔に癒やされる。育児は楽しい」と話すイクメン。しかし最近、契約社員の妻から求められる家事と育児の分担の割合が「極限にきている」と感じている。

 男性は妻より通勤時間が短いこともあり、毎朝五時半に起きて朝食を作り、七時に一人娘(5つ)を連れて家を出る。保育園に預けた後、一時間ほどかけて出勤。勤務後も週二回は娘を迎えにいき、晩ご飯を作り、風呂に入れて寝かしつける。娘が急に熱を出したり、妻と娘が同時に寝込んだりした時なども、会社を休んだり早退したりした。

 男性は平等に負担しているつもりだが、妻からは今以上の分担を求められる。男性は土日出勤や、泊まり出張などで家を空けることもあり、その間、妻に任せているからだ。

 分担の話し合いをすると妻と衝突しがち。妻は「あなたは『できない』で終わりでしょ。私だって大事な仕事があるのに」と話す。男性は「充てられる時間はすべて充てている。これ以上は無理」と感じている。

 夫婦共働きの世帯が増え、イクメンはそれほど珍しくなくなった。社会で女性の役割が増す中、家事を妻と公平に分担するという夫も増えた。そうした変化に伴って、夫が周囲から求められるハードルが上がり、生まれたのがイクメンブルーという言葉だ。ただ、夫の分担を増やすよう求められる一方で、長時間労働はなかなか解消されないなど、夫がより積極的に子育てに参加するための環境改善は必ずしも進んでいない。そこで、家と職場との板挟みで悩む人もいる。

 都内の金融機関の総合職の男性(33)は、別の金融機関で総合職として働く妻との間に二人の娘がいる。

 長女が生まれたのは六年前。妻は出産後三カ月で職場復帰した。業務内容が同じこともあり、妻と家事育児を平等に分担してきた。男性は「当然のこと」と苦にしなかった。

 ただ、男性の職場は残業が当たり前という雰囲気。同僚は定時を過ぎても黙々と作業し、午後九時、十時からの会議も珍しくない。とても上司に「定時に帰らせてほしい」とは言い出せない。男性は「ちょっと抜けます」と伝え、娘を保育園に迎えにいき、ご飯と風呂を共にし、帰宅した妻に娘を託し、会社に戻ったこともあった。

 男性がつらかったのは、職場に相談相手がいないこと。両立の悩みを一人で抱え込み、「メンタルが悪くなる」と悩んだ。相談した妻は「私はできるのに。あなたはなぜ」。男性はつい反論してしまった。「職場での見られ方が男と女では違う」

 男性が抱えがちな悩みや葛藤を「男性学」として研究する大正大の田中俊之准教授(社会学)は「家事育児を進んでするようになった男性は、仕事との両立の大変さを実感するようになった。『男性は仕事が第一』という価値観はまだ根強く、家事育児にまじめな人ほど悩みがちになっている」と話す。

 五月五日付の(下)では、そんなパパたちはどうしたらよいか考える。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報