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【暮らし】

世界が注目するブータンの幸福論 財増やすより欲望減らす

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 秋篠宮ご夫妻の長女眞子さまの訪問などで、話題になったヒマラヤ山脈の麓にあるブータン。物質的な豊かさではなく、「GNH」(グロス・ナショナル・ハピネス=国民総幸福量)を軸に、国民の幸福感を重視する政策で知られる。折しも、現地の事情に詳しいNPO法人国際建設機械専門家協議会(東京都品川区)代表理事の白井一さん(72)や現地の新聞記者らが本紙名古屋本社を訪れたのを機に、あらためてブータンの幸せについて考えた。 (白井康彦)

 ブータンの面積は九州とほぼ同じで、人口は政府推計で七十万人台。国土のほとんどが山岳地で、人口の大半が高度二千メートル以上の高地に住んでいる。

 国民一人当たりの国内総生産(GDP)は、日本の十五分の一ほど。日本などの支援を受けながら道路などのインフラ整備を進めている。識字率もまだ六割ほどだという。

 実質的な鎖国政策を捨てて開国したのは一九七一年のこと。七六年にワンチュク前国王が、持続可能な経済発展、伝統文化の保持、環境保護などを柱に、GNHを重視する政策を提唱した。二〇〇五年に初めて実施された国勢調査では、国民の97%が「幸せ」と答えた。

 白井さんは道路建設の技術指導のため〇三年以降、ブータンを二十二回にわたって訪問している。地形の関係でライフラインの工事は難しく、「近代化の面では明治十(一八七七)年ごろに似ている面がある」と言う。それでも、強い魅力を感じる。「多くの人は『家族が健康で、ご飯をおなかいっぱい食べられれば幸せ』と感じているでしょう」と話す。

 ブータン人の幸福感は、しばしば「幸せの方程式」=図参照=と表される。幸せの量は、財産の量を欲望の量で割った数値。先進国では、分子の財産を増やせば幸福に近づくと考える人がほとんどだが、ブータンでは分母の欲望を抑える考え方がごく自然に国民に根付いているという。欲を抑えられれば、財産が少なくても幸福。他人をうらやむ感情も小さくなる。

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 白井さんは、この国民性の根底を「チベット仏教が隅々まで根付いているから」とみる。他人に親切で、協力し合う。

 ブータンのこうした考え方は世界的に注目されている。日本でも、個人宅などから物資を集めて生活困窮者に分配する支援活動や、貧困家庭の子どもの食事をサポートする子ども食堂など、持ち物を分かつ動きが出始めている。「分配」や「シェア」を、物質的な豊かさに代わる幸せの尺度として注目する向きもある。

 NPO法人環境文明21(東京都大田区)共同代表の加藤三郎さん(77)も、欲を抑える考え方を各地で説明している。「物質的な豊かさばかりを追求するのはいいかげんにして、『足るを知る』が大事」と話す。

 

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