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【暮らし】

<食卓ものがたり>涼菓に脈々 地下水の恵み くずまんじゅう(福井県小浜市)

できたてのくずまんじゅうを水槽に入れ、外の天候の様子を見ながら「よく晴れて暑い日だと、1日で5000〜6000個作る」と話す上田藤夫社長=福井県小浜市で

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 ちょろちょろと地下水が流れる水槽の中にしずめられたおちょこから、くずまんじゅうがするっと飛び出す。直径五センチ、高さ二・五センチの菓子から、中身のこしあんが薄墨色に透ける。口溶けがよく、ほのかな苦味を上品な甘みが覆う。

 口の中はひんやりするが、胃の中までは冷えない。「この水は年中、一五度前後に保たれ、夏でも製品が冷えすぎず、体にもやさしい」。一八三〇(天保元)年に創業で、明治初期からくずまんじゅうを作り続ける福井県小浜市の和菓子店「伊勢屋」の五代目社長上田藤夫さん(65)は目を細める。

 店がある一帯で自噴する「雲城(うんじょう)水」が菓子作りの原点だ。地下三十メートルから湧く軟水で、食材のうまみを引き出す名水として、地元の店や家庭で使われている。

 上田さんによると、明治時代の大火の後、現在地に移ってからくずまんじゅうの製造を開始。地下水のほか近隣にくずの名産地があり、良質の材料を入手できた。胃腸に効く漢方薬にも使われるくずは、体力が落ちる夏場の菓子に最適。「かつては夏に、店がある通りの鮮魚店など十数店でも作って売っていたため『くずまんじゅう通り』とも呼ばれていた」と懐かしむ。

 今は、地元産のくずの生産量が減り、奈良・吉野産を使う。あんは北海道・十勝産の小豆を雲城水で炊いて作る。水にといたくずを透明になるまで練った生地をおちょこの底に敷き、その上にあんを載せ、くずの生地をかぶせる。おちょこごと水槽で冷やして固める。

 上田さんは十年ほど前、急いで湯沸かし器にあった水道水を生地作りに使ったところ、客から「薬臭い」と言われた。普段、何げなく使っている水の恵みを再認識し、添加物は加えないと決めている。「昔の味を守っているからこそ、名物になっている。丁寧に作り続けたい」

 文・写真 出口有紀

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◆味わう

 伊勢屋のくずまんじゅうは1個120円(税込み)。問い合わせは同店=電0770(52)0766=へ。

 地下水が豊富な同市雲浜1の老舗和洋菓子店「志保重(しほじゅう)西津店」でも、できたてのくずまんじゅうを店内の水槽で冷やしている。60年ほど前から製造しており、担当の清水勇雄取締役(45)は「一度、くずまんじゅうを蒸しているので、くずとあんが一体になって、よりなめらかな食感になる」と話す。4個入り453円(税込み)。問い合わせは同店=電0770(53)0599=へ。

 

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