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【暮らし】

障害者一人一人を見て インターネット放送局で番組制作

番組に込めた思いを話す梅原義教さん=大阪府東大阪市で

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 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者らが刃物で刺され、十九人が死亡、二十七人が重軽傷を負った事件から二十六日で一年。大阪府東大阪市を拠点とするインターネット放送局「パンジーメディア」は知的障害者が放送に携わり、事件をたびたび取り上げてきた。番組制作の責任者で、生まれつきの脳性まひで障害がある梅原義教(よしのり)さん(42)に、番組づくりや事件から一年がたつ社会への思いを聞いた。 (諏訪慧)

 パンジーメディア 知的障害者のグループホームなどを運営する社会福祉法人「創思苑」(大阪府東大阪市)が主体となり、インターネットで動画を配信している。法人の職員と障害者が中心となり、2016年9月に放送開始。原則、毎月第3金曜日に番組を更新している。

 パンジーメディアを設立したのは、障害のある人のことをもっと知ってほしいからです。

 昨年二月から企画を練るなど準備を始め、同九月に放送を開始。ですから、津久井やまゆり園の事件が起きたのは放送開始直前の準備の真っ最中でした。最初は、入所者が次々に元職員に殺されたという事態が理解できませんでした。「そんなことが起こり得るのか」と。次第に「僕たちをもっと知ってもらわないといけない」という思いが一層強くなりました。

 障害者排除を正当化する犯人の主張は、役に立つ人ほど価値があるという考えが基本。ただ、それは決して犯人だけの考えではなく、世の中に漂っているものだと感じます。

 最初の放送は、予定を変えて冒頭で事件を取り上げました。「同じ人間なのに殺されるなんて嫌だ」「好きで障害者として生まれたわけではない」など、事件についての障害者の声を紹介しました。

 私は生まれつきの脳性まひで、手足が不自由で移動には電動車いすが欠かせません。地元の特別支援学校を卒業してしばらくは自宅から障害者施設に通っていましたが、二十四歳のときに実家を出てグループホームで暮らし始めました。自分で自由に出掛け、買い物などをしたかったんです。

 放送は一回五十分ほどで、障害者をめぐる「ニュース」、暮らしぶりをまじえて半生を振り返る「私の歴史」など四本立て。毎月一回、更新しています。

 「私の歴史」には、脳の病気の後遺症で言葉を話せない男性が出演したことがあります。本人が原稿を書き、ナレーターが読み上げました。話せなくても映像なら、どんな暮らしをしているのか分かりやすく届けられます。

 この一年余りの間に、やまゆり園の事件のほか、障害者差別解消法の施行もありました。先月は、車いす利用者が飛行機への搭乗を拒否されたなど、多くの人が障害のある人について考えるきっかけとなる出来事があったと思います。

 でも、それで世の中の風潮が変わったと感じられることはありません。依然として一人一人を見ることなく、「障害者」とひとくくりにしてイメージだけで捉える雰囲気があるように思います。「何を考えているのか分からない」「怖い」などと。たしかにまったく言葉が出せない人や、何を言っているのか聞き取りにくい人もいます。おそらく私も、介助者らが通訳してくれないと、初対面の人は話すことが理解しにくいかもしれません。

 障害が重い人でも、表情や行動などで意思は表現しています。でもやり方はそれぞれだから、分かってもらいにくい。だからこそ一人一人の顔や声、暮らしぶりを届けたい。もちろん一回見ただけで、理解してもらえるとは思いません。だからこれからも積み重ねていきます。

 

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