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【暮らし】

認知症対応法 HPで紹介 「家族」「施設」現場の声を集約

「日常生活で何に困っているかを知り、解決する研究をしたい」とHPを示す数井裕光さん=大阪府吹田市の大阪大大学院医学系研究科で

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 物忘れや妄想などの認知症に伴う症状に、家族らがどう対応するかをまとめたインターネットのホームページ(HP)が注目されている。家族のほか施設職員らから寄せられた対応方法や、その方法ごとの成功率などを掲載している。どう対応したらよいか分からず、試行錯誤を重ねる周囲の人たちの心身両面の苦労を減らす狙いだ。 (出口有紀)

 このHPは「認知症ちえのわnet」。大阪大大学院医学系研究科精神医学分野講師の数井裕光さん(53)が中心となり、二〇一六年に開設した。投稿は現在、六百七十件ほど。「物忘れ」「拒絶・拒否」など症状ごとに分けられ、体験ごとに成功率も掲載している。

 例えば「同じことを何度も聞いたり言ったりする」という症状に、「(言い方を変えず)同じ説明を繰り返す」とした投稿は十五件。そのうち、繰り返すうちに理解してくれたとしたのは53・3%、伝わらなかったとしたのは46・7%だった。結果は拮抗(きっこう)しているが、数井さんは「聞かれた側は、前とは違う説明の仕方をしないといけないと思いがちだが、同じ説明を繰り返す方が本人には覚えやすいのかも」と推測する。

 「ある物が人や顔などに見える」というケースでは、「ある物」を取り除くと、九割で症状がなくなった。一方、「配偶者が浮気をしている」という妄想では「そんな事実はないことを説明する」という対応では全く効果がなかった。

 どんな方法がどの程度うまくいったかを示し、対応に困った家族らが参考にできるようになっているのが、HPの特徴だ。数井さんは「この場を何とかしたいという切実な思いの介護者もいる。家族が悩む場面は似ているので、解決に向け、まずは成功率が高い対応を示したい」と話す。

 利用者への対応に悩む介護施設での活用も視野に入れる。兵庫県川西市の介護老人保健施設の作業療法士椿野由佳さん(53)もHPを参考にする一人。トイレの場所を覚えられず、部屋で排尿してしまう八十代の女性のために、初めはトイレの扉に大きなマークを張ったが、効果はなかった。

 HPで「トイレの扉に利用者のペットの写真を張ったら成功した」という事例を知り、女性が好きな造花を飾り、トイレの近くで歩行訓練を続けたところ、トイレに行けるようになった。「他の専門職の斬新な方法が参考になった。うまくいかないことでも、専門職の気づきで、状況は変えられる」と再認識する。

◆周辺症状の検証が課題

 認知症の症状には、ほとんどの人に起きる中核症状と、それに伴う周辺症状がある。記憶障害や判断力の低下など、脳機能の低下によって起こるのが中核症状で、中核症状などから生じる徘徊(はいかい)や暴力、妄想などが周辺症状だ。認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)ともいわれる。

 周辺症状は、できていたことができなくなる不安などがもとになっており、患者本人の性格や置かれている状況が影響するため、起こる症状はさまざま。HPへの投稿も周辺症状への対応が多いが、より多くの人が参考にできるようにするには、投稿数を増やすことが必要だ。

 当面、投稿の目標件数は千件。椿野さんは「認知症カフェなどで、介護者の声をその場で投稿する催しを開いてはどうか」と提案する。

 数井さんは「成功率が高い対応を医療現場でも試すなど、集めたデータの検証もしていきたい」と話す。

 

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