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【暮らし】

労組が悪質クレーム対策 心病み、離職…現場疲弊も会社及び腰

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 スーパーやコンビニ、ファミリーレストランなどの接客現場で散見される悪質クレーム。商品や対応に問題がなくても文句をぶつけられたり、ミスに対して過剰な謝罪や賠償を要求されたりという事例が現場を疲弊させている。対応に悩んだ労働者が職場を去る例も起き、危機感を抱いた労働組合が対応に乗り出した。 (寺本康弘)

 首都圏のアパレルショップ店長の女性(28)は以前、客に暴言をぶつけられた。常連の同年代の女性客から声を掛けられ、接客中で「少々お待ちください」と言うと、客は「はあ」と突然怒って退店。後日、店の前から「マジふざけんな! ブス!」と叫んだ。別の日にも、店内で「この店の商品ってホント地味」と、周囲に聞こえる大声で毒づいた。

 女性は「直後は落ち込んだ」とするが、「いろんなお客さまがいるから日々勉強」と今は割り切る。

 スーパーや百貨店など流通業者などでつくる産業別労働組合「UAゼンセン」の流通部門執行委員、安藤賢太さん(41)は「悪質クレーム対応で、精神的に病んでしまったり、職場を去ったりする若い人は少なくない」と話す。

 悪質クレームは以前からあったが、安藤さんは「最近増えていると感じる」と話す。このため、人手不足が続く小売・サービス業の現場は、対応に時間と人を割くことが大きな負担になっている。

 業界には「お客さまは神様」という考えが浸透。客と波風を立てたくないと会社全体での取り組みに及び腰の社が多く、悪質クレームを助長する結果となっていた。対応は現場任せとなっており、そこで働く人の健康と雇用を守ろうとゼンセンが対策に乗り出した。

 ゼンセンが手掛けたのはガイドラインづくり。百貨店やスーパー、ドラッグストアなどで働く組合員が一年かけて議論。悪質クレームを「要求内容または要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレーム」と定義した。

 さらに要求内容と要求態度の具体的内容を項目で示した。要求内容は七項目で、謝罪として土下座を求める▽従業員の解雇を求める▽「法律を変えろ」など実現不可能な要求−など。

 要求態度は八項目で、長時間拘束型▽リピート型▽暴言型▽インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷−などで、それぞれ対応策が示された。具体的には「誠意をもった対応後、膠着(こうちゃく)状態になってから三十分後に理解されない場合はお引き取りを願う」「大きな怒鳴り声をあげられたら、やめるよう求め、録音をする」などだ。

 ガイドラインでは、自尊心が高く完全主義的な傾向が強い人や、社会への不満が多い人たちが悪質クレームをする傾向があると指摘している。

 ゼンセンは今後、組合員に行った悪質クレームの実態調査を公表し、社会的な機運を盛り上げるという。

 一方、消費者がサービスや商品について主張する権利を脅かす恐れはないのか。安藤さんは「これまで悪質クレームという定義すらなかった。判断に迷うグレーな部分があるかもしれないが、それは今後議論すればよい。まずは現場の疲労感を少しでも改善したかった」と話す。

 全国消費者団体連絡会の担当者は「悪質クレームに対して企業が対応していかなければならないのは理解できる」とした上で、「消費者には被害を適切かつ迅速に救済される権利が消費者基本法で認められている。この正当な権利が排除されるようなことがないようにしてほしい」と話す。

<UAゼンセン> 流通のほか、繊維や医療、福祉、レジャーなどさまざまな産業で働く人が対象の日本最大の産業別労働組合。正式名称は全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟。組合員数は170万5791人、組合数は2429(いずれも8月2日現在)。

 

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