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【暮らし】

アルコール依存症治療に変化「断酒」から「減酒」へ 湯本洋介医師・外来を開設、テストで問題判定「日本ではこれから」

患者(右)の話を聴く辻本士郎院長=大阪府東大阪市で

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 お酒を飲み始めたら、やめられないアルコール依存症は、ブレーキの壊れた車にも例えられる。その治療は長らく「断酒」だけだったが、深刻な問題が生じる前の段階で医療が関わり、酒量を減らす「減酒」に導こうとの取り組みが動き始めた。うまくいけば飲酒者の健康度を上げるのに役立ちそうだが、問題がないのに自分の飲酒行動に疑問を抱くのは難しい。誰もが無縁とは言えない依存症。時には「自分は大丈夫?」と振り返りたい。(鎮目宰司(しずめさいじ))

 神奈川県横須賀市にある国立久里浜医療センターは四月、飲酒量を減らすための治療や指導を行う国内初の「減酒外来」を開設した。

 担当の湯本洋介医師(精神科)によると、八月末までに受診したのは約三十人。断酒に踏み切れなかった軽症の依存症患者のほか、「飲酒後記憶がなくなった」「家族に暴言を吐いてしまった」などのトラブルに悩む依存症の“予備軍”とも言える人々が、県外からも訪れる。

 依存症治療の基本は酒を断つことだ。しかし「断酒を強要されるイメージが問題飲酒者をアルコール外来から遠ざけている面はある」と湯本さん。

 近年、軽度な依存症や予備軍の人々には減酒でも効果があるとの考え方が主に欧米で出ており、治療方法の有力な選択肢として注目されつつあることも減酒外来開設の背景にある。治療には公的医療保険が適用されるため、窓口負担は一回当たり数千円程度という。

 まず受診者の飲酒の問題を判定するテスト「AUDIT」を行う。さらに依存症かどうかや、重症度をみるテストも行い、減酒で対応可能な段階かを確かめる。その上で、飲酒量や休肝日の頻度といった目標を患者自身が決め、「飲酒日記」を毎日付ける。一〜二カ月ごとに受診して、目標の達成度を確認する流れだ。

 AUDITは十問で四十点満点。点数が一桁なら「危険の少ない飲酒」だが、十点台になると危険度が上がり、二十点を超えると依存症の疑いが強くなるという。

 湯本さんによると、減酒外来を訪れる人は二十〜三十点台が中心だが、十点台の人もいる。「十五点以上の人は国内に三百万人とも言われています。欧米では減酒が広まりましたが、日本ではこれからです」

 大阪府東大阪市で、依存症治療に携わってきた「東布施辻本クリニック」の辻本士郎院長によると、最も手ごわいのは患者の「否認」。依存症であることを患者自身が受け入れようとしないことだ。

 クリニックに通う患者らは「依存症と最初に言われたときはショックだった」と口をそろえる。「自分は依存症と違う」と否認を続けて重症化。仕事を失い、家族を失い、犯罪に手を染めてしまった人も。

 「重症患者でも『自分は酒が好きなだけ』と否認する。慢性疾患と同じで、本人が納得して治療を受けないとうまくいかない」と辻本さん。予備軍や軽症の人はなおさら、自分の飲酒に問題があると認めるのは容易ではないという。

 辻本さんは「アルコール依存症は誰でもかかる可能性がある病気。ブレーキが壊れる前に手を打てば、病気にならずに済む。トラブルがあるのに『酒の上のこと』と安易に済まさず、自分をよく見つめてほしい」と訴える。

 

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