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【暮らし】

経験者が育児家庭訪問 母安らぐ ホームスタート

ホームスタートを利用する関真由子さん(左端)と訪問者の加藤正美さん(右から2人目)。3児と遊びながら子育ての話をする=愛知県豊川市で

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◆孤立や虐待防止に効果

 六歳未満の子どもがいる家庭を「ホームビジター」と呼ばれる専門的な研修を受けた子育て経験者が訪ね、保護者の気持ちを聞く「ホームスタート」という取り組みがある。育児で悩みを抱えた母親が孤立したり、子どもを虐待したりするのを防ぐのが目的。近くに相談できる人がいない母親もホームビジターと話すことで、落ち着きを取り戻して子どもと向き合っている。 (花井康子)

 四歳男児と二歳男児の双子の三人を育てる愛知県豊川市の元保育士で主婦の関真由子さん(36)は、一年ほど前からホームスタートを利用している。「長男のときは、トイレなど早めからしっかり教え、目の行き届いた子育てをしていた」。ところが、双子が生まれると世話と家事に振り回され、精神的にも余裕がなくなった。「上の子のようにしてあげられない」と、自分を責めて落ち込んだ。

 実家は遠方で、周囲に頼れる人もいなかった。「誰かに話を聞いてもらいたい」と、地域のフリーペーパーでホームスタートを知り申し込んだ。週一回、ホームビジターの加藤正美さん(53)が訪問し、子どもたちと遊んだり、習い事に付き添ったりしながら話し相手になってくれると、徐々に心が晴れていった。「加藤さんに『頑張っているね』と言われ、うれしかった。子育ての手伝いはもちろん、気持ちに寄り添ってもらえた」と笑顔を見せる。

 ホームスタートは英国で生まれ、日本では二〇〇九年にNPO法人ホームスタート・ジャパン(東京都)が設立されて始まった。現在は全国約百の地域で、子育て支援のNPO法人や社会福祉法人などがホームスタート・ジャパンからノウハウを習得して実施している。訪問は一家庭につき四回だが、状況によっては増やすこともできる。週一回二時間程度、親の気持ちを聞く「傾聴」を中心に、必要なら家事や育児を一緒にする。子どもを預けたり家事を代行してもらったりはできない。利用は無料。

 愛知県豊橋市では、〇九年に子育て支援NPOの「まんま」が活動を開始。四十〜七十代のホームビジター約二十人が気持ちの受け止め方などを四十時間の講習で学び、市内の約四十世帯を訪れている。

 ホームスタート・ジャパン代表理事で大正大教授の西郷泰之さん(63)は「無償のボランティアだからこそ、対等な関係で親の気持ちに寄り添える」と話す。

 各地の児童相談所などに寄せられた児童虐待に関する相談は一五年度、九万三千四百五十八件。十年前と比べると倍以上となっており、背景には社会構造の変化などで人付き合いが薄れ、子育て家庭が孤立化したことが指摘されている。各市区町村は、生後四カ月までの乳児がいる家庭を全戸訪問し養育環境の把握に努めているが、厚生労働省は今年二月、より詳細な把握に向けて、ホームスタートの積極活用を各自治体に促している。

 被災者の支援にも役立っている。東日本大震災直後に始まった福島県では、避難先で知り合いがおらず孤立した被災者親子を支援。これまでに延べ約三百五十件の利用があった。

 ただ、ホームビジターは無償ボランティアのため、なり手不足に悩む実施団体もある。また、研修を受けても、訪問先の家庭と合わなかったり自信がなくなったりして、実働に至らないケースもある。

      ◇

 問い合わせはホームスタート・ジャパン=電03(5287)5771=へ。

 

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