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【暮らし】

<家族のこと話そう>「男性学」研究の礎に 社会学者・田中俊之さん  

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 私は一九七五年生まれ。その頃の平凡な家庭で生まれ育った平凡な子でした。

 父は家具メーカーの社員で、デパートの売り場に立ち、販売をしていました。母はデパートで働いていたときに父と出会い、結婚して専業主婦になりました。父は水曜日しか休みがなく、家事と子育てはすべて母が任されていました。私は長男、五歳下に弟と八歳下に妹がいます。

 私は理屈っぽく、ひねくれた子と思われていました。成績表で「整理整頓ができる」の項目が低い評価だったので、父から「生活態度がだめなのは、人としてどうしようもない」と注意されました。それで思ったのは、父親はどうしてたまに出てきて嫌なことを言うのか。どちらかというと嫌いでした。

 母親は心配性。さまざまなことで常に大丈夫なのと聞いてくるので、うっとうしいと感じることもありました。

 大学に入り、男性は学校を卒業したら就職して定年退職まで働き続けることを当たり前のように受け入れるのが理解しがたく、研究するため大学院に進みました。これは後に男性学の研究につながりました。

 斜に構えてモノを見る私ですが、研究を通じて両親への見方は変わりました。

 父親は週に一日しか休みがなく残業も多い。父親として何か言おうとすると、威厳を示す以外に方法がなかった。それ以外に、父親に何ができたのかといえば難しかったでしょう。嫌ってはかわいそうと、今は思います。

 母も、父不在の状態で、たった一人で子ども三人を世話しました。心配が先行するのも仕方ないと思います。

 妻は研究者ではなく会社員ですが、男性学が注目されていないときから価値があると言ってくれ、それが私の心の支えになっていました。今は育休中。子どもは長男一人です。

 私は、男性に仕事中心の生き方を見直そうと言っているので、毎日午後六時に帰宅します。ただ、妻はメディアを通じた私の発言と、家での私とに齟齬(そご)があると言います。家に早く帰っているかもしれないけれど、妻の家事や育児の負担を軽くしているかは疑問なんでしょうね。

 一方で妻は私が新聞に載ったり、テレビに出たりしたら喜びます。だから夫婦ともに葛藤がありますね。仕事の成果を出すには、家庭をおろそかにする可能性があるからです。私からすれば罪の意識があり、妻からすれば負担が重くなる。実際、私がこうしてインタビューを受けている今、妻は子どもの面倒をみていますが、誰からも偉いと言われないわけですから。

  聞き手・寺本康弘/写真・由木直子

 <たなか・としゆき> 1975年、東京都小平市生まれ。男性ゆえに抱えてしまう悩みや葛藤を研究する男性学の社会学者。大正大准教授。著書に「男が働かない、いいじゃないか!」(講談社+α新書)「<40男>はなぜ嫌われるか」(イースト新書)がある。

 

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