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【暮らし】

<食卓ものがたり>あえて剪定 つやめく実 クリ(岐阜県中津川・恵那市)

超低樹高栽培の木の下で収穫されるクリ。イガごと拾うことで虫や病気の発生を防ぐという=岐阜県中津川市で

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 秋の味覚として全国的に知られる岐阜県東濃地方の栗きんとん。材料のクリの収穫が続く九月下旬、同県中津川市の旧坂下町地区を訪ねた。青みがかった恵那山を望む畑に整然とクリの木が並ぶ。足を踏み入れると土はふわっと軟らか。落ちたイガから、つやつや光る実が顔をのぞかせている。

 夏の天候不順で「ことしはちょっと小さめ」と農家の鎌田一三(いちぞう)さん(71)は言うが、機械でイガを除き、水で洗ったクリはほとんどが三センチを超える大きさ。多い時で一日一トン収穫する。

 木は放置すれば八メートル以上の高さになるが、畑では五メートル以下に抑えられている。県が開発した「超低樹高栽培」。主要な幹をあえて剪定(せんてい)することで枝が横に広がる。日当たりがよくなり、高齢者も手入れしやすい。鎌田さんは「冬場の剪定は大変だが、木が健康になり実が大きく育つ」と話す。

 中津川市や隣接する恵那市は山間地で、かつては山でクリを収穫し、家庭で栗きんとんが作られていた。栽培は百年前から続くが、一九八〇年代に地元菓子店の商品が全国の百貨店で扱われるようになると、生産が追い付かなくなった。九州など他県のクリが大量に使われ、高齢化も重なって地元の生産は縮小した。

 恵那市の菓子店「恵那川上屋」の鎌田真悟社長(54)はそのころ、修業先の東京で岐阜の栗きんとんを食べ「昔と味が違う」と感じた。他県のクリは加工までに日数がかかり、当時の技術では鮮度が落ちる。地元に戻るとクリ農家と交渉。新たな栽培法での生産の再開を訴えた。選別の基準を厳しくした上で九四年に全量を買い取る約束を交わし、「超特選恵那栗」というブランドへと発展した。

 当初は年間十トンだった出荷量は、今では両市の五地区で百トン近くに上る。こうした動きに押し上げられ、この地域全体のクリの出荷量も伸びている。「栗菓子の里を栗の里へ」。鎌田社長の夢は、夢でなくなっている。

 文・写真 小中寿美

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◆味わう

 中津川市の老舗の川上屋から、のれん分けの形で創業した恵那川上屋。クリを使った多彩な商品を扱うが、鎌田社長のお薦めは何と言っても「栗きんとん(恵那栗)」。収穫された超特選恵那栗を当日中に入荷し、砂糖だけを少量加えて炊きあげ、職人が茶巾で絞る。口の中でホロリとほどけ、クリ本来の香りが広がる。収穫時期で異なる品種を使うため、買う時期によって味や粘りが微妙に違うという。栗きんとんは1個230円(税込み)。問い合わせは同社=電0573(20)1196。

 

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