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【暮らし】

<いらない遺産相続放棄>(上)借金 生前に有無を確認

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 遺産の分け前でもめる家族もあれば、借金といった「いらない遺産」に悩む家族もある。負の遺産を肩代わりする事態に直面した時に検討したいのが、すべての遺産相続を放棄する「相続放棄」だ。バブル崩壊後の長期不況などの影響で、申立件数も増えている。ただし申し立てには被相続人の死亡などから三カ月と期限があるほか、借金をこっそり残している場合もある。生前に借金について家族で話し合っておくことが必要だ。 (砂本紅年)

 東京都内の戸田浩司さん(42)=仮名=は四年前、父を亡くした。父は二十年以上も家に居着かなかったので生活状況も仕事も分からず、亡くなったことも病院からの連絡で知った。

 遺産に預貯金はなく、唯一の遺産だった九州にある父名義の畑も、相続人による遺産の分割協議を行い、伯母の名義に変えた。書類上の手続きが終わり、父から戸田さんへの遺産は何もなく、相続は終わったと思っていた。

 しかし二年後、「父に五百万円貸していた」と訴える男性から、戸田さんを被告とする借金の返還請求訴訟が起こされた。

 この時点で、相続放棄の申請期限はとっくに過ぎており、遺産の処分も済ませている。通常なら、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことを「承認」したとみなされるケースだ。

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 戸田さんは司法書士や弁護士に相談。家庭裁判所に「借金は訴訟を起こされて初めて知った」として相続放棄を申し立てた。主張は認められ、訴訟も借金の返済は求められなかった。戸田さんは「初めに相続放棄ができていたら、こんな苦労はなかった」と振り返る。

 司法統計によると、相続放棄の申し立ては年々増えている。二〇一五年は約十八万九千件と二十年前の三倍になった。

 相続放棄に詳しい司法書士中村昌樹さん(40)は「そもそも相続放棄という手続きがあることを知らない人も意外と多い」と話す。

 相続放棄をするには、親の死亡などを知った日から三カ月以内に、必要な書類をそろえて家庭裁判所に申請しないといけない。「四十九日が終わるのを待っていると時間がなくなる。葬儀が終わった段階で動きだして」と中村さん。

 預貯金や金融資産、土地・建物などプラスの遺産は比較的確認しやすい。しかし借金のことや連帯保証人になったことは話したがらない人も多く、遺族でも見つけづらい。「昔事業をやっていたから借金があるかも」と心配になって相続放棄する人もいる。

 相続放棄をすると、初めから相続人でなかったとみなされ、マイナス財産だけでなく、預貯金などプラス財産を相続する権利も失う。資産と借金をてんびんにかけ、慎重に判断することが必要だ。

 また、相続の権利は次の相続人に移る。相続順位一位の子ども全員が相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人の父母へ、さらに次は兄弟姉妹へと移る=図参照。何も知らない親戚に迷惑がかかることもある。あらかじめ了解を取っておきたい。

 中村さんは「本来は、本人が生前に家族に借金の存在などを話しておいてほしい。本人から持ち掛ける方が、みんな話しやすい」と勧めている。

 ◇ 

 二十六日の(下)では、空き家や地方の土地の相続放棄を紹介します。

 

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