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【暮らし】

<Life around the World> 旬を狩る秋の味覚

 秋が深まり、森や畑、市場に食の恵みがあふれてきた。野菜や果実、狩猟の獲物など旬の味覚は、文化や歴史を伝え、地域の絆も深めている。

カボチャ狩りを楽しむキーナンさん一家=米ニュージャージー州で

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◆米国 どれにしようかな?

 秋の青空の下、畑にオレンジ色のカボチャがごろごろと転がっている。大きいもので直径四十センチ、重さ二十五ポンド(約十一キロ)くらいはありそう。

 米ニューヨーク中心部マンハッタンから車で南西に約一時間の東部ニュージャージー州イースト・ブランズウィック。ハロウィーン(三十一日)を前に、恒例のカボチャ狩りが最盛期を迎えていた。

 あらかじめへたが切られたカボチャを一ポンド当たり六十九セント(約七十八円)で購入。表面を好みの顔の形にくりぬけば、ハロウィーンでおなじみのランタン(ちょうちん)の出来上がりだ。

 同州出身のブライアン・キーナンさん(46)と妻のリサさん(47)は、長男ジェームズ君(6つ)とカボチャ選びに夢中だ。ブライアンさんは「私も親に連れられてきた。毎年続く伝統。子どもに植物の成長過程を教えることもできる」とにっこり。

 ハロウィーンは紀元前から欧州に定着していた古代ケルト人の行事とされ、十九世紀に米国に伝わった。悪霊よけのため怖い顔をしたランタンはカブで作られていたが、米国で広く栽培されていたカボチャに切り替わったとの説もある。

 今やハロウィーンは米国発の文化として世界に浸透し、日本でも若者らが仮装パーティーを楽しむ。農園を経営するジム・ジアマリースさん(62)は「カボチャは先住民から栽培を教わったもので、ハロウィーンはとても米国的な行事だ。日本人にもカボチャを買いに来てほしいね」とおどけてみせた。

 (ニューヨーク・東條仁史、写真も)

猟の開始を告げる角笛=パリ近郊で

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◆フランス 冬を告げるイノシシ

 長く三度吹かれた角笛が、獲物がイノシシだと告げる。「出たぞっ」「そっちだ」。朝露にぬれ、静かだったフランス・パリ近郊、サンレジェール・アン・イブリーヌの森がにわかに活気づく。遠くで響く猟犬の鳴き声と銃声。角笛が短く何度も吹き鳴らされた。「仕留めたな」。勢子(せこ)たちの顔がほころんだ。

 九月中旬、待望の猟期が始まった。普段は個人で行くが、初日は別だ。集落の十四人ほどが集団で繰り出す。「成果より、みんなでやることが大事なんだ」とグループの代表フランソワ・マリさん(59)。誰が勢子を務め、誰が待ち構えて撃つか。息を合わせた連携プレーは、地域の絆も強くする。

 この日、八十キロのイノシシを仕留めたのは仲間のディディエ・カヌさん(58)。「俺に向かって突進してきたのが運の尽きだな」と豪快に笑った。「フランスはどこも同じだけど、クリやドングリを食べているからうまいんだ」とか。

 解体した獲物を参加者で均等に分けた後、イノシシやウサギのパテなどの滋味あふれたジビエ料理をつまみながら大宴会に。「上々の滑り出しだ」とマリさん。笑い声とシャンパンの開く音が、何時間も続いた。

 (パリ・竹田佳彦、写真も)

収穫された野生のクランベリー。冷凍保存され、長い冬の健康管理に役立てられる=モスクワ郊外で

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◆ロシア 赤い実で冬乗り切る

 時折、膝まで沈む湿地を進むと、たらいやバケツを手にした人たちに出会う。お目当ての果実は、ぼーっと突っ立ったままじゃ見つからない。腰をかがめ、足元の葉やつるを手で払うと赤いビーズのような姿をのぞかせる。

 ここロシアで「クリュークワ」と呼ばれるクランベリーはビタミンC豊富で、長い冬を乗り切るための貴重な栄養源だ。近くにいた女性に手渡された二、三粒をかみつぶすと、思わず唇をすぼめたくなる強い酸味が広がった。

 情報化された時代でも、足を運ばないと分からない。モスクワ中心部から車で西へ一時間ほどのこの場所も知る人ぞ知る。二年前から通うイリーナさん(46)もその一人。「キノコ狩りに行く途中でバケツを持った人たちが、森へ入っていくのを偶然見かけたのよ」

 秋に収穫したクランベリーは冷凍保存され、多彩に用いられる。ロシアの家庭やレストランに置かれる定番飲料「モルス」はつぶしたクランベリーに水、砂糖や蜂蜜を加えてつくる。乳製品やパイのトッピングにもなれば、肉料理のソースの材料にもなる。 (モスクワ・栗田晃、写真も)

水揚げされたばかりの上海ガニを客に見せる業者=中国江蘇省蘇州市で

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◆中国 紹興酒と相性は抜群!

 中国江蘇省蘇州市の太湖(たいこ)にある上海ガニの養殖場で、カニが仕切りのネットをよじ登っている。

 「秋風起、蟹脚痒(秋風が吹くとカニの脚がかゆくなる)。せかせかとよじ登る様子が、かゆい脚を自分でかいているように見えるでしょう」と養殖業者の陳さん(46)が教えてくれた。食いしん坊にシーズン到来を告げる風物詩だ。

 湖畔の市場は活気にあふれていた。

 「隣より安いよ。うちのは新鮮さが違う」。おじさんの売り込みがしつこい。値段は雄雌一対で三十元(約五百円)から。海外でも有名な陽澄湖(ようちょうこ)産の上海ガニだと、上海のスーパーでは百五十元はする。「本物のカニ好きは陽澄湖産にはこだわらないんだよ」とおじさんは自信ありげだ。

 上海ガニは、タラバガニやズワイガニのように豪快にかぶりつくものではない。小さく、決して食べやすくないため、日本人には好き嫌いが分かれるところだろうが、口いっぱい広がるミソの風味は濃厚で、紹興酒との相性も抜群だ。

 この地域でカニを食べる習慣は、五千年もの歴史があるとか。ただ中国全土の人が食べるようになったのは、改革・開放政策が進んだ一九九〇年代半ばから。産地偽装も止まらない。 (上海・浅井正智、写真も)

 ※海外特派員が世界各地の暮らしぶりをリポート。第3土曜に掲載します。

 

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