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【暮らし】

<なくそう長時間労働>「トラック野郎は今」編(中) 待機「5時間」…多くが無給

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 かつてはきらびやかな電飾で、日本列島をまたにかけた「トラック野郎」。日本の高度成長を物流で支えた彼らは、三十数年たった今、どこに消えたのか。その手掛かりを求めて、東京都内のとある場所を訪ねた。 (三浦耕喜)

 「ああ、まだ並んでいますね。長野からも熊本からも。八戸のトラックもあります」。ここは東京駅や築地市場から程近い東京都中央区豊海(とよみ)町。案内してくれたのは、現役のトラック運転手で労働組合の活動を通じて彼らの相談に乗る「運送労働アドバイザー」の梅木隆弘さん(48)だ。そこにあったのは、道という道の脇を埋める各地からのトラック。「荷降ろし順を待つ列です。いつ列が動くか分からないので、運転手は車から離れられません」と梅木さんは言う。

 築地市場を表とすれば、豊海は舞台裏のような所。冷凍倉庫が立ち並ぶ。「運転手に声かけますから、ついてきて」と梅木さん。タオルを首に掛け、八戸ナンバーのトラックのドアをトントンとたたく。窓から顔を出した運転手に差し入れの缶コーヒーを渡しながら声をかけた。「八戸からって遠いね。荷降ろし待ちかい?」

 「ああ、もう五時間も待っているよ」。プシュッと缶を開けながら記者に目を移す。梅木さんが趣旨を説明すると、運転台から降りてきた。「それなら山ほど言いたいことがある」

 この男性は五十四歳。夜通し冷凍魚介類を運び、東京には夜明け前に着いた。昼近くになっても待たされるなら、もっと遅く来ればいいのにと思うと、男性は「荷降ろしは早い者順だからな」とつぶやく。

 全国から集まる荷の量に対し、倉庫側は荷をさばく要員やスペースが不足しているのだ。「ここだとは言わないけど、俺たちも荷降ろしや積み込みをやらされるよ」。トラック運転手は品物を荷主の元まで運ぶまでが本来の仕事。荷降ろし・荷積みのタイミングや、荷をどうさばくかは、本来は荷主の責任だ。

 だが実際は、それらは「付帯業務」の名の下に運転手も従事させられる。待機時間もトラックから離れられない以上、労働時間として見なされるべきだが、休憩時間として給料をつけない会社が多い。

 「昔は高速をガンガン飛ばして休憩時間をつくる者もいたが、世間も厳しくなってな」と男性。「タコメーターで安全運転しているか会社でチェックされる」。確かに。高速でも「暴走トラック」は少なくなった。それ自体はいいことだ。

 「そうするとな、トイレ休憩したくても、ようやく、いい感じでトラックが走っているのに、そのペースを崩したくないわけよ」。それじゃ、どうするの?と問いながら、嫌な予感がする。「そういう時は空いたペットボトルを使って…(中略)…ずいぶん器用にできるようになるもんだよ」

 そんな話を聞くうちに、前の車が動き始めた。「じゃあ、戻るわ」。男性は小走りで去って行った。

 「…という業界です。若い人が来なくなるわけです」と梅木さん。「今の運送業、私のような四十代と彼と同じ五十代が支えているのです」。データを確認してがくぜんとする。二〇〇一年時点では大型トラックの運転手は三十代以下が半分を超えていた。それが、一五年には八割が四十代以上。二十代以下に至っては、28・5%から3・2%にまで激減している。

 一体、何があったのか。そして、何が起ころうとしているのか。梅木さんはとある業界関係者に連絡を取った。 (次回は二十日)

 

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