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【暮らし】

<食卓ものがたり>美食家うならす「貴婦人」 洋梨「ル・レクチエ」(新潟県三条市)

収穫後の追熟で、表皮が緑色からきれいな黄色に変わるル・レクチエ=新潟県三条市で

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 先月二十二日に販売が解禁された新潟県産の洋梨「ル・レクチエ」。とろけるような食感と濃厚な甘さから「西洋梨の貴婦人」と呼ばれる。同じ西洋梨のラ・フランスより大きく、一玉は約四百グラム。今月下旬までの一カ月しか味わえない希少品だ。

 新潟はコメや日本酒のイメージが強いが、江戸時代から続く日本梨の産地でもある。信濃川や阿賀野川流域の肥沃(ひよく)な土地、夏場の長い日照時間などが栽培に適していた。

 新潟でル・レクチエの栽培が始まったのは一九〇三(明治三十六)年。仕事でロシアに赴いた果樹農家が、数十種類の苗木を取り寄せた。

 だが病気に弱い洋梨の栽培は難しく、大量生産は断念。取り寄せた苗木の中で「一番おいしい」と、数軒の農家の庭先に残されたのがル・レクチエだったとされる。自家消費していたが、一部を料亭などに出すうち、美食家の間で、知る人ぞ知る洋梨として珍重されてきた。

 県の担当者は「百年以上ほそぼそとやってきた。『商売にならなくても、おいしいものを作りたい』のが新潟県人のこだわり。他県の人だとあきらめるのでは」と苦笑する。既に原産地フランスでも、ほぼ栽培されていないという。

 県内の生産者は五百二十七人。同県三条市の梨農家土田広樹さん(41)は「つくるのは難しい。病気に弱く、皮が薄く、傷つきやすい」と話す。

 関係者が接ぎ木に最適な梨の木を探すなど試行錯誤を重ね、平成の初めに安定収穫にこぎつけた。年間生産量は約千六百トンで、国内シェアの八割を占める。

 収穫後、約四十日間もの追熟が必要。傷む果実の割合が増えるため、収穫品のうち六〜七割しか出荷できない。希少価値もあって、高品質になると店頭で一個約四千円のものもある。

 「宮崎県のマンゴーに続く高級果物として、地域ブランド化したい」と語る土田さんは四、五年前から香港に輸出している。二〇二〇年の東京五輪では選手村で提供される食材を目指す。「いつか本場フランスでも披露し、新潟県人が大事に育ててきたル・レクチエの成長した姿を見てもらいたい」

 文・写真 砂本紅年

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◆買う

 ル・レクチエは、多くの西洋梨を栽培していたフランスの有名園芸家の名前にちなんだとされる。お歳暮など贈答用としても年々人気が高まっている。東京都や名古屋市などの百貨店で購入できる。

 新潟県内では、洋菓子店「ガトウ専科」の焼き菓子「キャラメル ル・レクチエ」(ネット販売あり、店名で検索)など、ル・レクチエを使った菓子が販売されている。

 

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