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【暮らし】

<Life around the World> 冬到来 暖を求めて

 冬本番。身を切るような寒さがしばらく続く。体を温めて活動しやすくする知恵や飲み物、冷たい風に負けない保温具、かさむ暖房費を抑える節約術。寒さとの折り合いにもお国柄が感じられる。

分厚い「防風被」を取り付けて走る中国のバイクなど=北京で

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◆中国 「布団」 街駆け抜ける

 冬場を迎えた中国では、「布団」が疾走する姿が各地で目につくようになる。バイクや電動自転車の前面に取り付けて寒さを防ぐ「防風被」は、すっぽりと体全体を覆う大きさが特徴。表面はナイロンや人工皮革だが、中に詰めた綿の厚みで、布団が路上を走っているかのように見える。

 渋滞や地下鉄の混雑を避け、電動自転車などを使って通勤・通学する人は多い。十二月になると北京の最低気温は氷点下三〜五度になる。そこで活躍するのが防風被だ。身を切るような寒風からハンドルを握る両手だけでなく、上半身から腰まで保温する効果があるという。

 「十一月初旬から使い始める。ちょうど寒くなり始めるころだから」。銀行から自宅に戻る途中という北京の李海洋さん(56)は十年前から愛用。「もっと寒くなると大きい防風被に付け替える。電動自転車に乗る時には欠かせないよ」

 男性は黒や濃紺が多いが、おしゃれ好きの若い女性には赤やピンクなど明るい色が人気。三十〜六十元(約五百〜千円)程度でネット通販でも簡単に買える。水玉や花、キャラクター模様などの柄物も増え、徐々に「進化」を遂げている。

 一方、分厚い防風被によって普段と違った運転感覚になり、「ハンドルやブレーキ操作に支障が出る」と危険性を指摘する声もある。実際に流行の高まりとともに事故も増加。警察が注意を呼びかけるが、「布団」が持つ温かさの魅力には勝てないようだ。(北京・秦淳哉、写真も)

燃えるラム酒と砂糖とともにグリューワインをグラスに注ぐライヒェルトさん(右端)=ベルリンで

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◆ドイツ 燃えて酔う赤ワイン

 今年二度目の雪が舞ったドイツの首都ベルリン。九日、カトリック教会付属ホールの厨房(ちゅうぼう)に、ちょうネクタイ姿の大男三人が並んだ。

 午後六時半、ドイツの冬の風物詩「グリューワイン」づくりが始まった。

 赤ワインを大鍋に八本注ぎ、火にかける。そこへシナモン、クローブ、オレンジとレモンの皮の粉末を入れ、しばらく待つ。

 さらに、大鍋の上に火ばさみを渡し、そこへ砂糖の塊を置く。上からアルコール分五四度のラム酒をたらし、砂糖に染み込ませる。

 グリューワインの一種「フォイアツァンゲンボウル」の準備が整った。直訳すると「火ばさみポンチ」。

 教会の信者二十人が見つめる中、砂糖に火をつけると、青い光が幻想的な雰囲気を醸し出した。火がついたままワインを注がれたグラスが客席に回ってゆく。

 「外は寒いけど、部屋で肩を寄せ合って楽しむ。心まで温まる」とライヒェルトさん(37)。

 この会では、同名のコメディー映画「フォイアツァンゲンボウル」を毎年上映する。みなセリフを暗記し、同じ場面で笑い声を立てる。伝統を愛するドイツの人々の年の瀬は、こうしてゆっくり過ぎてゆく。

 (ベルリン・垣見洋樹、写真も)

寒中水泳を前に、互いに声を掛け合う愛好者クラブのメンバー=モスクワで

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◆ロシア 極寒の川で体は熱く

 十二月上旬の土曜日の朝、モスクワ中心部からほど近いモスクワ川の岸辺。気温零度の中、水着に着替えた寒中水泳愛好者団体のメンバーたちが集まった。

 氷片が浮かぶ川につかり、中央付近まで泳ぎ進むメンバーもいる。寒さに強い体をつくる健康法として、二年前から始めたドミトリーさん(56)は「陸に上がると、水中で縮んだ血管が広がって、体の中が燃えるように熱くなるんだ。風が吹いても汗をかくぐらいさ」と言う。

 団体のリーダー、ナタリヤ・セラヤさん(51)は七年前に始めた。セラヤさんは始めて五年目の冬にはTシャツ、短パンでジョギングできるようになった。昨年はダウンジャケットなしで過ごしたという。

 ロシアでは健康法とは別に、冬に冷水につかる風習がある。ロシア正教の一月の洗礼祭に合わせ、十八世紀ごろから、凍った川や湖の表面に穴を開け、沐浴(もくよく)する儀式が広まった。

 「もちろん寒さを感じるけど、寒中水泳のおかげで、普通の人より我慢できる」とセラヤさん。元来、忍耐強いのはロシア人の気質。厳しい冬に挑む覚悟を決める意味合いもあるのかもしれない。

 (モスクワ・栗田晃、写真も)

暖房テントを設置したベッドに座る崔さん。テントは大きさも形もさまざまなタイプが販売されている=ソウルで

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◆韓国 懐ホカホカのテント

 冬の寒さが厳しく、十一月に気温が氷点下になる韓国の暖房といえば、床暖房の「オンドル」。ボイラーを使って湯を循環させる温水循環式が一般的で、部屋全体が温まるが、ガス代がかさむ。そこで最近、人気を集めているのが「暖房テント」だ。

 ソウル市内のワンルームマンションでことし一人暮らしを始めた女性会社員の崔真営(チェジニョン)さん(31)は二カ月前、テレビショッピングで暖房テントを購入した。部屋が西向きで天井が高いせいか肌寒く、十月にオンドルを使い始めざるを得なかったからだ。

 購入したのは底がなく、ベッドを覆うように取り付けるタイプで三万九千ウォン(約四千円)。さほど効果は期待していなかったが、想像以上にテントの中は暖かく快適で、十一月末までオンドルを使わずに済んだ。オンドルを入れるようになっても、設定温度が低くて済む。さらに「肉料理をしても布団に臭いが付かないのがいい」と笑う。

 二〇一二年にいち早く暖房テントの製作、販売を始めたバイマム(釜山市)によると、テントは特に子育て家庭や一人暮らしの女性に人気。ファミリー向けの宿泊施設、低所得の高齢者世帯などに支援品として配布する自治体による需要も増えている。十一月に韓国南東部で地震が発生した際には、被災者の避難所に暖房テントが設置され、注目を集めた。果たして、伝統のオンドルに続く冬の韓国の必需品となるか−。

 (ソウル・境田未緒、写真も)

※海外特派員が世界各地の暮らしぶりをリポートする「世界の暮らし」は、第三土曜日に掲載します。

 

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