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【暮らし】

<家族のこと話そう>父の子育てを見習う 脳研究者・池谷裕二さん

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 三人きょうだいの真ん中で、兄と妹の陰に隠れて自由に育ちました。自営で車の整備をしていた父と専業主婦の母に「勉強しろ」と言われたことは一度もないんですよね。「自分がしてこなかったから、子どもに言う資格はない」とかたくなでした。だから、小学生のときはずっと遊んでいましたし、成績は常に真ん中以下でした。

 興味を持つとのめりこみ、その分野の本ばかり読んでいるような子でしたが、両親は本当に自由にさせてくれました。特に父は、僕が何に興味を持っているかをよく見ていてくれました。

 星に夢中になると星の図鑑を、さらにはまると天体望遠鏡を買ってくれる。釣りが好きとみれば毎週海釣りに連れて行ってくれました。実体験を大切にする子育てをしてもらいました。それが自分の中で今も生きています。

 研究室の助手だった三十二歳のとき、二十五歳だった妻と結婚しました。今、四歳と一歳の娘がいます。父がしてくれたように、子どもたちには本物を見せてあげたい。恐竜なら図鑑ではなく化石展を、車ならミニカーではなくモーターショーを。

 今朝も上の子と犬の散歩に行きました。「桜の葉がこんなに真っ赤になって落ちているね」「サザンカはつぼみから、こうやって咲いていくんだね」と一つ一つ手に取って説明するのを、娘は喜んで聞いています。家のリビングにいたら絶対に味わえない体験を重ねていきたいです。

 娘には常に「どうして?」と聞くようにしています。「どうしてズボンではなくスカートで行きたいの?」。答えられないと「今日はジャングルジムに登るでしょ。スカートとズボンどっちがいいのかな」と考えるヒントを与えて、あまり先に説明しないようにしています。自分で考える力を付けてほしいと願っています。

 長女が四歳になるまでの成長を本(「パパは脳研究者」クレヨンハウス)にしました。「脳研究者って、そうやって子どもの成長を見るんですね」と言われて初めて、多くの人は僕のような視点で子育てを捉えていないと気付きました。僕は脳研究者の視点からしか娘を見ることができません。熱心に絵を描いていたら「頑張って描いていてえらいね」と行為をほめるのではなく、「この絵、好きだなあ」と作品をほめないと、娘の脳が「ほめられたいから私は絵を描いているのかな」と誤解してしまう!と。

 子どもの成長過程は狩りの時代から変わりません。人類にとって不変のものだから、娘たちが大人になって社会が変わっていても、僕の書いた成長の記録は娘たちの心に響くと思っています。

 聞き手・今川綾音/写真・市川和宏

<いけがや・ゆうじ> 1970年、静岡県生まれ。東京大薬学部教授。専門は神経科学と薬理学で、脳の成長や老化について研究している。著書は「進化しすぎた脳」(講談社ブルーバックス)、「受験脳の作り方」(新潮文庫)など多数。

 

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