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【暮らし】

腎臓リハビリに注目 透析中に運動療法

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 かつては「安静第一」とされた慢性腎臓病の治療。近年は運動不足の害の方が大きいことが分かり、運動療法を中心とする「腎臓リハビリ」が注目されるようになった。病気が進行し人工透析となった患者にも運動の恩恵は大きいとして、透析時に運動療法を提供する施設が増えつつある。専門学会は安全な運動療法を提供できる人材を育成し、腎臓病と運動をめぐる新常識をさらに広めたいとしている。 (吉本明美)

 五十代から透析を続ける仙台市の男性(72)は定年退職後、自宅近くの川平内科(千葉茂実院長)に通い始めてから、週三回の透析が「運動の機会」に変わった。初めは気乗りしなかったが「周りにつられて運動してみたら体調がいいんです」。

 むくみもあって歩くのがつらかった現役時代とは変わり、足腰の動きが滑らかで体重も適正に。今は透析前にバランス能力などを鍛える器具で体を動かした後、透析中もベッドでペダルこぎなどの運動をこなす。散歩も毎日欠かさない。

 「運動を始めたら透析以外の日も活動的になったと話す患者さんが多いです」と健康運動実践指導者の資格を持つ同内科スタッフの高橋亮太郎さん(36)。

 同内科は腎臓リハビリの重要性を提唱する東北大医学部の上月正博教授(内部障害学)と協力し、二〇〇七年から透析患者の運動療法を積極的に進める。

 一七年十一月中旬、約五十のベッドが並ぶ同内科の透析室を訪ねると、体を横たえて透析を受けながら、多くの患者がペダルこぎや、重りを付けた足を上下させる運動をしていた。従来の透析のイメージを変える光景だ。

 上月さんによると、腎臓病患者に安静が推奨されていたのは、運動するとタンパク尿が出るなど、腎臓の悪化を思わせる現象がみられるため。しかし、実はタンパク尿は一過性で、長期的には運動した方が腎臓に良い影響があると明らかになった。腎機能が著しく低下した透析患者についても、〇三年ごろから「定期的に運動する患者はしない患者に比べ生存期間が長いことや、運動すると透析で血液の老廃物を除去する効率が高まるといった驚きの研究報告が海外で増えてきた」という。

 だが、四〜五時間かかる透析を週三回受ける患者が別に運動の時間を確保するのは簡単でない。上月さんらは透析中に運動の機会を提供しようと考えた。

 もちろん注意すべき点はある。透析患者は心臓の機能が低下しており、貧血にもなりやすい。運動による事故を防ぐには、患者の運動能力を定期的に評価した上で、軽い運動にとどめることが大切だ。

 知識のある指導スタッフが求められるが、現在は不足している。そこで上月さんを理事長に一一年に発足した日本腎臓リハビリテーション学会は、腎臓リハビリ指導士の養成を一九年から始めることを決めた。「安全で質の高い運動療法を広め、保険適用を目指したい」と上月さんは話す。

 

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