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【暮らし】

「プレーヤーズファースト」怒声なく考えさせるスポーツ指導  子どもを選手として尊重

「決まったー」と喜び合う子どもたち=東京都大田区で

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 スポーツをする子どもを一人の選手として尊重する「プレーヤーズファースト」という考え方が広がっている。目指すのは目の前の勝ち負けでなく、生涯スポーツを楽しめる人間を育てること。東京都内で今月、こうした考えに共鳴した小学生のバレーボールクラブが集まり、大会を開いた。大人の一方的な指示や怒鳴り声はなく、選手たちはのびのびと真剣なプレーを繰り広げた。(竹上順子)

 アタックが外れた選手に「タイミングは合っているよ!」と声を掛けるコーチや、ミスをした仲間を「惜しい!」と励ます選手たち。大田区で開かれた大会「プレイヤーズ ファースト カップ」では、前向きな言葉が飛び交った。

 逆に聞こえなかったのは、「何やってんだ!」などの怒声や、「そこへ動け」など選手の意思を無視するような細かい指示だ。

 台東区の「NEST(ネスト)」コーチの川村貴彦さん(50)は試合で、相手チームのアタッカーの特徴だけ伝え、対応策は子どもたちに委ねた。「自分で駆け引きができるのもスポーツの醍醐味(だいごみ)」と、考えさせる指導を心掛けているという。

 大会は今年二月、初めて開かれた。別の大会で、他チームの指導者の怒声や厳しすぎる指導に萎縮した子どもたちがいたことから、「選手第一」の理念を同じくする七クラブが参加して始まった。二回目の今回も七クラブの十二チームが参加。選手全員がコートに立てるよう試合数を多くし、実力が近いチームと試合できるよう工夫もした。

 品川区の「品川グリフィンズ」監督の間(はざま)誠一郎さん(45)は、子どものスポーツ全般で「指導者本位になっている」傾向を問題視。大人が勝ちたいあまり、子どもを同じポジションに固定して多様な経験を積ませなかったり、けがをしているのに試合に出したりするチームもあるという。

 間さんによると、大人の指示通りにすれば、短期的には、ある程度は勝てるという。しかし「自分で考えなければ、いつか壁にぶつかる」。選手が考えてプレーできるためには材料が必要で、そのためにも「さまざまな場面を想定して練習し、子どもたちが『引き出し』を多く持てるようにしている」と言う。NESTの選手で小学六年生の小磯花恋(かれん)さん(12)は「コーチはいつも褒めてくれるので、うれしくてがんばれる。チームもいい雰囲気。これからもバレーを続けて強いチームでもやってみたい」と話した。

◆池上さん 試合に出さないのは問題

 「プレーヤーズファースト」の考えは、どうすれば定着するのか。サッカーのJリーグチームの下部組織などで子どもたちの指導経験があり、「『叱らない』育て方」(PHP文庫)などの著書がある池上正さん(61)は「何のためにスポーツをするのか、指導者が分かっていることが何より大切」と話す。

 池上さんは「スポーツの基本は楽しみ。フェアプレーを通じて子どもを大人にすること」と説く。だが日本では訓練や鍛錬ととらえられ、忍耐や根性ばかりが強調されているとみる。

 体罰はもちろん、選手に考えることを促さず、成長の機会を奪ったり、試合に出さなかったりすることも人権無視に当たるという。池上さんは「大人はこうした基本に立ち返り、自分たちの指導方法を考える必要がある」と話した。

 

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