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【暮らし】

大切なものは何ですか

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 2017年は、他人の気持ちを必要以上に推し量る「忖度(そんたく)」が流行語となった。一方、怒りなどの感情の赴くままに起きたとみられる事件や事故もあった。正反対に見えるが、いずれも「他者への過剰反応」が根っこにある。今年の生活面でも、他者への過度の配慮や憤りが背景にある話題を取り上げた。その記事で紹介したアドバイスなどを振り返り、新しい1年に向けて「自分が大切にしたいもの」を考えるヒントにしたい。 (今川綾音)

■お疲れニッポン 周囲への配慮、ほどほどに

 スマートフォンは便利だが、「即レス(=早く反応)しないと」という思いに縛られがちだ。「『どうでもいいね』と思った投稿にも、義務的に『いいね』のボタンを押す」などSNS疲れを感じる人も。ネット依存に詳しい東京大大学院の橋元良明教授は「何でもかんでも、せっせと反応を示さず、自分が聞いてほしいことがある時だけ使っては」と呼び掛ける。

 連載「なくそう長時間労働」では、残業する同僚や上司への気兼ねも働き過ぎの一因だと指摘した。「なぜ、残業はなくならないのか」を著した働き方評論家の常見陽平さんは、個人でできる対策に、「自分の大切にすることを明確にし、仕事の優先順位を決めて」と提案した。

 子どもの育ちや成長への配慮が、サービス残業や休めない形で跳ね返る悩ましいケースも。「子どもたちが喜ぶ顔を思い浮かべると手は抜けない」という保育士のサービス残業や、「顧問の自分から休みたいとは言えない」という中学高校教員の部活問題はその例だ。

 連載「考えようPTA」では、PTA活動の負担を取り上げた。家族との時間を犠牲にしながらの活動に疑問を抱きつつ、学校や保護者間に漂う「子どものため」との同調圧力を感じて、「変えよう」と言い出せない親の声が多数寄せられた。

 孫育てに協力する祖父母世代が心身ともに疲れる孫ブルーや、妻からの「もっと育児を」という要求と仕事のはざまで葛藤する夫のイクメンブルーも。求められる役割を真剣に果たそうとするあまり、疲弊してはいないか。

■怒りエスカレート 広めたい「優しさ」

 怒りの感情に任せ、他者を傷つける行為も目立った。6月に起きた東名高速道路でのあおり運転事故は、最悪の結果を招いた。

 怒りの矛先は「立場が弱い」とされる人にも向く。悪質クレームもその一例。客の立場から接客する店員らのミスを必要以上に責めて謝罪や賠償を要求する。心を病んだ店員らが職場を去る例も出ている。

 連載「要注意!!クラッシャー上司」では、部下を精神的につぶしながら出世する、人の痛みに鈍感な上司の姿を伝えてきた。筑波大の松崎一葉(いちよう)教授は「共感できる仲間と一緒になって会社に働き掛けていくことはできる」と話す。

 教員の不適切な指導をきっかけに子どもが自殺に追い込まれる、指導死という言葉も広まった。日本体育大の南部さおり准教授は「精神的に未熟な子どもは大人が思っている以上に傷ついてしまう。生徒のしかり方など(教員志望の)学生には言葉の重みを感じてほしい」と訴える。

 通年連載の「いのちの響き」は、障害者と、その家族や支援者がテーマ。「世の中に居場所がない」と思わされてきた親子や、一人暮らしを始めた男性らが社会とのつながりを求め、さまざまな感情に揺れながら歩む姿を描いた。元日紙面で、女優の宮城まり子さんが「もっと優しさを広めたい」と語ったが、果たして、そんな社会に私たちは近づいているのだろうか。 (肩書は掲載当時)

◆心満たすため立ち止まって 質問家・松田充弘さん

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 周囲に振り回されず、よい関係を築くにはどうすればいいか。「質問家」として生き方を見つめ直す問いの手法を考え、本や講座を通して提案する松田充弘(みひろ)さん(44)に聞いた。

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 日本人は、働き方に問題のある人、一人で複数のことを抱えている人がとても多い。特に女性は家事や仕事、育児など多くの役割を無理をしてこなしている。忙しすぎるために心に余裕がなく、立ち止まって考えることができない。

 自分の手に負えないことは、人の手を借りるのが世界の標準だ。「仕事を休めない」「家事も仕事もきちんとやらなければ」と、人の目を気にして自分を縛っているのは、自分自身であることに気付いてほしい。

 自分が満たされていない人に、周囲の人を幸せにすることはできない。自分を一番大事にしてほしい。自分の心を満たすことが、周りの人とよい関係を築くことにつながっていくはず。

 自分や家族を犠牲にして他人に合わせたり、怒りに身を任せたりしないためには、立ち止まって自分に問い掛けてみることが大事だ。「何を最も大切にしたいのか」「本当に手に入れたいものは何か」「やりたくないことは何か」

 その一歩として、まずは今日、近しい人とぜひ質問しあってみてください。一年後の大みそかに「今年は幸せだった」と言うためには、どんな一年の過ごし方をしたらよいのか。

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 山形市生まれ。講座「魔法の質問」を国内外で主宰。著書に「魔法の子育てしつもんBOOK」(KANZEN)など。

 

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