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【暮らし】

<正月に食す>(2)福梅(金沢市) 福々しい雪国の知恵

生産のピークを迎え、手作業であん詰めされる縁起物の銘菓「福梅」=金沢市専光寺町の森八で(魚眼レンズ使用)

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 紅白梅を模した菓子を、砂糖がふんわりおおい、さながら雪化粧されたよう。でも、一口かじるとバリッとして、中のあんがねっとり甘く、かれんな見た目を裏切る食べ応えだ。

 「これが金沢の迎春菓子の福梅。梅形のもなかとは違う」。創業一六二五(寛永二)年の老舗和菓子店「森八」の若おかみ中宮(なかみや)千里さん(34)は胸を張る。

 この堅さはかつて、雪深い金沢で年越しするための知恵だった。「一昔前は正月に向け、日持ちがする食料をためていた。昔はもっとかちかちで、今より賞味期限が長かった」

 時代は移り変わり、十数年前には客から柔らかさを求められたことも。ただ「歴史や込められた意味も感じ取ってほしい」と、特色を伝えることに注力した。

 皮は、原料のもち米の作柄で仕上がりが変わるため、毎年、専門業者に試作をしてもらい、堅さや色、焼き加減を確かめる。北海道産の小豆で作ったあんに金沢伝統の米あめを混ぜ、豆の風味を保ちつつ、もっちりした食感と甘みを出す。

 工場では、従業員たちが丸くしたあんを皮ではさんで詰め、はみ出たあんをへらで丁寧にとっていた。花びら一枚一枚まであんを行き渡らせるため、機械には頼らない。最後に蜜をかけ、グラニュー糖をまぶすと「皮をしけらせず、バリバリの食感が残る」。

 同社で福梅を作り始めたのは江戸時代末期。福梅の由来は諸説あり、形や味は店によって微妙に違うが、同社では、加賀藩をおさめた前田家の家紋「剣梅鉢(けんうめばち)」をかたどった型を使い続ける。横五センチ、縦五・五センチの福梅の中央に、おしべやめしべのように見えるのが剣という。中宮さんは「新春に前田家の繁栄に敬意を示す気持ちがあったのでは。ただ、剣と思えないほど小さいし、おしべやめしべに見えなくもない。別の説に思いをはせるのも楽しい」と目を細める。

 文・出口有紀/写真・戸田泰雅

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<メモ> 福梅は金沢市内の和菓子店などが12月上旬ごろから年明けまで売り出すが、完売次第、終了する店が多い。

 市内の老舗和菓子店「落雁(らくがん) 諸江屋」の福梅には、上に掛ける和三盆糖に落雁の粉が混ぜられている。「表面をさらさらにして、皮をパリッとさせられる」と同社の諸江豊さん(30)は言う。米あめ入りのあんをたっぷり詰めた福梅はふっくらして、愛らしい形だ。

 問い合わせは森八本店=電076(262)6251、落雁 諸江屋本店=電076(245)2854。

 

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