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【暮らし】

<私の転機>鳥のように自由で充実 大病を患い会社辞め 独学で風見鶏を制作

風見鶏を作るようになり、「豊かな生活を送れている」と話す尾関良雄さん=横浜市泉区の工房で

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 風に吹かれてくるくる回る風見鶏。横浜市泉区の尾関良雄さん(70)は53歳のとき大病を患い入院した。病院のベッドから大空を自由に舞う鳥を見て、思い立ったのが風見鶏の制作だ。試行錯誤を重ね、多い月には12、13個が売れるようになり、人とのつながりもできた。

 自動車用アンテナを作る会社で設計、開発を担当していたとき、右の脇の下にしこりができました。最初は見て見ぬふりでしたが、卵ぐらいの大きさにまでなり、病院に行くと悪性リンパ腫との診断でした。手術で摘出しましたが、再発したため入院することに。

 放射線や抗がん剤での治療が長く続きましたが、「ずっと働いてきたんだから、ごほうびの人生の夏休みね」という妻の一言を胸に、前向きに取り組みました。しかし、会社を半年以上も休み、体力も衰える中、もう会社には戻れないと退職を決意しました。

 次の道を探していたとき、病室の窓から風を感じながら自由に飛ぶハトが見えました。うらやましく感じました。鳥で何か作れないかと思い、退院後、雑誌で見た風見鶏をヒントに挑戦しました。

 子ども時代から工作遊びが好きでした。年金がもらえるまでの数年間なら、経済的に何とかなる。そう思い、木で風見鶏を作ってインターネットで販売することにしました。材料費だけでも元が取れればいいとの気持ちでした。

 ただ、工作遊びとは勝手が違います。ホームページの作り方や、値段の付け方も分かりません。試行錯誤を重ねて何とか形にしましたが、全く売れません。

 独学で木工技術を磨きながら、三年ほどしてようやく少しずつ売れるようになりました。最初は注文を受けて一から作っていましたが、素材や部品など多くの在庫を抱えねばならず、今はカモメやクジラなど六種類から選んでもらいます。

 大きさは三十センチほど。真ちゅう製とは違うオリジナルの風見鶏です。注文してくれた人の住む場所から地形を調べ、風の強弱を推測。適度に回るように回転具合を調整しています。

 写真や感想を送ってくれるとうれしいですね。ベランダに取り付けた人が「家の中から回る様子を眺めています」と言うように、風見鶏は屋内と屋外をつなぐものだと思うんです。

 振り返ると、病気にならず会社でずっと働いていたらどうだったか。会社員時代に比べ、稼ぎは十分の一になりましたが、人とのつながりもでき、豊かな生活を送れています。 (寺本康弘)

 

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