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【暮らし】

車いす、選んで快適に 専門家「関心持ち 相談を」

乗る人の背中のカーブに合わせ、背もたれの張り具合を調節できるタイプの車いすを見せる佐藤史子さん=横浜市で

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 持病の悪化や高齢のために要介護となって車いすを利用中だが、使い心地がいまひとつなのを我慢しているということはないだろうか。体に合わない車いすを使い続けると、新たな障害の原因になるなど体に悪影響がある。専門家は「車いすで生活が大きく変わることもある。ユーザー側も関心を持ち、不満は相談してほしい」と話している。 (吉本明美)

 「歩けなくなっても生活は楽しめますよ」。二〇一七年十一月。神奈川県平塚市で介護関係者らに講演した佐賀大医学部の松尾清美准教授(リハビリテーション工学)は、福祉機器の手助けで高齢者らの生活の幅がどれだけ広がるか、幾つもの実例を紹介した。強調した一つが車いすの大切さ。自身は大学生の時の交通事故で脊髄損傷となって以来、約四十年の車いすユーザー。当事者の視点を生かした福祉機器の開発経験も豊富だ。「車いす選びは重要だと三十年近く訴えているが、積極的に選ぼうという意識の高齢者はあまり多くないですね」と話す。

 車いすは介護保険でレンタルできる。厚生労働省の統計によると、一七年四月までの一年間の貸与件数は約八百二十六万件。年々増加傾向にある。

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 理学療法士として在宅でのリハビリ支援に携わる横浜市総合リハビリテーションセンターの佐藤史子地域リハビリテーション部担当部長には、車いすの大切さを痛感した体験がある。市内の七十代男性の家族から「ベッドで体を起こすと食事できるのに、車いすに乗るとすぐ眠ってしまう」と相談があった。自宅を訪ねると、車いすでは背中が丸まって顔が下向きになり、胸が圧迫されているようだった。顔が上がり、胸が開くように座れる車いすに替えたところ、食事ができただけでなく会話が増え、表情も豊かになった。

 「これは十年以上前の出来事で、今は背もたれの張り具合などを調節できる車いすが増え、クッションなども良くなりました。でも、快適ではなさそうな車いすに乗っている人に、家庭や施設で時折会います」。例えば、デイサービスの送迎車の空間に合わせた小さめの車いすに、家でもずっと乗っている高齢者。「介護保険の利用額には上限があるので、長時間乗る車いすは体にきちんと合った物を借り、短時間利用には手ごろな価格の物を自費で購入するなどの手もあります。選択に必要な情報が本人や家族に届くようにすることが大切」と佐藤さん。

 神奈川県総合リハビリテーションセンターで多くの車いすの開発に関わる沖川悦三(おきがわえつみ)主任研究員によると、車いすを決める際には、お尻の幅や肘の高さなどの寸法を合わせるほかに(1)自力で座った姿勢を保てるか(2)乗り移れるか(3)こげるか(4)快適に生活する上で他に何が必要か−を評価した上で、適切な製品を選ぶことが必要。福祉用具を貸与・販売する介護保険指定の事業所には福祉用具専門相談員がいるが「体の機能の評価には、できれば医療関係の専門職が関わるのが望ましい」(沖川さん)。職種を超え車いすについて学ぶ場を提供しようと、沖川さんが会長を務める日本リハビリテーション工学協会は分科会「車いすSIG」で講習会などを開いている。詳細は同分科会ホームページで。

 

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