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【暮らし】

「認知症の親『さん付け』で介護」 読者から反響

母と一緒に聴いたCDなどを手に、思い出を振り返る大石和代さん=浜松市中区で

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 認知症の親の介護で、意思疎通がうまくできずにイライラしたとき、あえて「さん付け」で呼ぶと気持ちが落ち着いた−。そんな読者の体験を昨年11月22日の本紙生活面で紹介したところ、他の読者からも、心構えやとらえ方を変えてみたら、苦しさが軽減したといった体験談が寄せられた。 (河郷丈史)

 認知症の母を十五年間、亡くなるまで自宅で介護しました。他人を侮辱してはいけないと教えてくれた母でしたが、「ばか」などと、乱暴な言葉も出るようになりました。

 母の認知症を受け入れることはできましたが、暴言を受けたりすると「なんでこんなことを言われないといけないのか」と、つらい気持ちになることもありました。介護だと思うと苦しいので、「高齢になって子どもに返っていく親への恩返し」ととらえると楽になりました。

 また、母が好きな歌を聴かせようと、五木ひろしさんのDVDや童謡のCDを買ってきて流しました。母はとても興味を示し、笑顔を見せ、声を出して歌いました。介護する私の気持ちも落ち着き、母と一緒に歌いました。会話だと、相手の言葉に応じないといけませんが、音楽はメロディーを追うだけ。時間が自然に流れました。(浜松市中区、大石和代さん)

◆「ボランティア」と気持ち切り替え

 認知症の夫を「老老介護」していましたが、二年前に施設に入所してもらいました。入所後、夫の認知症は進み、私のことも分からなくなりました。

 そんな夫を見るのがつらく、「自分が面倒を見ていたら、こうならなかったんじゃないか」と罪悪感が募りました。「私が妻でなければ、夫の人生はもっと違っていたのでは」とも思いました。「自分は楽しんではいけない」と、外出を控えました。

 そんなとき、夫の施設でボランティアを募集していました。できることはないかと申し出ると、相談員から「ご主人のボランティアをしてください」と言われました。ボランティアと考えると、夫の言動に左右されて感情を動かされることがなくなりました。それ以来、楽しむときは楽しみ、夫と会うときは一生懸命に向き合うようになりました。  (東京都新宿区、柳井豊美さん、八十歳)

◆東海大教授・渡辺俊之さん「関係性 変化させた好例」

 東海大教授で精神科医の渡辺俊之さん(58)は、認知症になるとそれまでのコミュニケーションのパターンが崩れるため、家族は意思疎通できないことにイライラすると指摘する。二つの事例はいずれも、以前からの親子や夫婦の関係を修正することで一定の距離が生まれ、気持ちが楽になったと考えられるという。

 大石さんのケースについては「お母さんのお母さんとなって接した。母と娘という関係をうまく変化させた」と指摘する。

 柳井さんの例については「『ボランティア』は普通、家族には使わない言葉。それをあえて使うことで距離感ができる。認知症の親を『さん付け』で呼ぶと気持ちが落ち着くのと同じメカニズム」とみる。

      ◇

 心にゆとりを持って介護するため、工夫していることはありませんか。皆さんの体験談を募集します。ファクス=052(222)5284=か、メール=seikatu@chunichi.co.jp=で。〒460 8511(住所不要)中日新聞生活部宛てに、郵送でも募ります。

 

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