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【暮らし】

<子どものために シングルマザーから教育者へ> (中)「理想の学び」求め渡欧

2年生の児童に「国際理解」の授業をする服部秀子さん。初めて担任を持ち、張り切っていた=名古屋市内で(服部さん提供)

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 十七歳で母になった名古屋市瑞穂区の服部秀子さん(34)は、二十八歳のときに講師として市内の小学校で教え始めた。

 「学ぼうと思えば、自分次第で何歳からでも学べることが分かった」。少しみんなと違う道を歩んだけれど、子どもたちに伝えられることは多いと感じ、再出発に胸がときめいた。

 最初の二年は非常勤講師として授業を補佐する立場。はたから見ていると、ついていけない子の様子がよく分かった。「全員同じやり方で進めるから、できない子が出る。それぞれの子に合ったやり方でできないのか」。内心、そう思ったが、ほかの先生や保護者の目もあり、口に出すことはなかった。そんな学校は居心地が悪くなり、息苦しくなった。

 三年目に常勤講師となり、二年生のクラス担任に。「子どもが主体的に学べるクラスをつくろう」。ようやく巡ってきた担任の仕事に意気込んだが、現実は厳しかった。定められた学習指導要領をこなすだけで精いっぱい。理想の授業を試みる余裕はなかった。「できない自分が情けなかった」

 救いを求めるように、会員制交流サイト(SNS)でフリースクールの主宰者など多様な教育者とつながり、突破口を探した。そんな中で、子どもの自主性を重んじる「オルタナティブ教育(伝統的でない代替的な教育)」に出合った。

 学習のテーマや進め方などは、子どもが自主的に選択して学ぶ手法で、実践している愛知県内のフリースクールを見学すると、子どもたちの生き生きしている姿が強く印象に残った。だが、今の状態で自分ができる内容ではない。理想と現実の板挟みにもがき、退職が頭をよぎった。

 「辞めるなら、やるだけやってからにしよう」。翌年、一年生のクラスを受け持つと、批判は覚悟で独自の手法で授業を進めようと決意。夏休みを利用し、オルタナティブ教育の一つ「イエナプラン教育」を取り入れている学校が多いオランダを訪れた。

 オランダの実践校は、年齢が違う子どもたちが一緒に学べる仕組みで、教員は一方的に教えるのではなく、子どもたちと話し合いながら授業を進めていた。子どもの自発性を重視した内容だ。「これが理想」と感銘を受けた。

 帰国後の二学期からは、通常の授業を減らし、子どもたちが自分で学習計画を立てる「自立学習」を週に五〜八時間、設けた。学習指導要領に沿って進める授業は「絶対やるぞコース」、自立学習は「自由にやるぞコース」と銘打ち、自立学習では、子どもたちに学ぶテーマや教材を自由に選ばせた。

 最初はどうしていいか分からず、子どもたちは混乱気味だったが、次第に植物の研究や読書など自分の好きなことを学べるように。自由に学ぶスタイルは保護者にも好評だった。

 手応えを感じ始めていたが、翌年、早くも壁にぶつかった。別の小学校に移って受け持ったのは、五年生のクラス。自由にテーマを選ぶよう促しても子どもたちは戸惑うばかり。授業は前に進まなかった。まっさらな一年生とは違い、従来の授業が染みついた子どもたちにとって、「自由」は押しつけられた価値観にすぎなかった。

 クラスがどんどんバラバラになっていく。子どもたちにはあれこれと指示してばかり。自立を重んじるはずが、いつしか子どもたちをコントロールしようとする自分がいた。

 何のために教員になったのか。「言葉でいくら理想を語っても、経験がないと実践できない」。イエナプラン教育を本格的に学ぼうと昨夏に退職。単身で再びオランダへ向かった。 (花井康子)

 

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