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【暮らし】

<子どものために シングルマザーから教育者へ> (下)「イエナプラン」を学ぶ

オランダ留学について話す服部秀子さん=名古屋市内で

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 名古屋市瑞穂区の服部秀子さん(34)は小学校の教員を辞め、昨年九月から三カ月間、子どもの自主性を尊重する「イエナプラン教育」を学ぶため、オランダに留学した。

 十七歳のときに産んだ息子は高校生に。「子育ても一段落」と、単身で渡航。出発前、息子に手紙を書いた。「これまでも何でもやりたいことをやる母親で、一番大変な思いをしてきたのはあなただったかもしれないね」。寂しそうな息子を前に後ろ髪が引かれる思いがしたが、学びたい気持ちが先行した。

 オランダでは、イエナプラン教育の専門家から理論や歴史などの講義を受けたり、教育実習をしたり。絵本の読み聞かせなどで子どもと触れ合う中で、相手が誰であれ、自分の意見をはっきり伝えることのできる子が多いと実感した。特徴的な子がいても目立つことはない。子どもの個性の芽を摘まない教育システムが浸透していた。

 校内は、教室内の机や椅子がリビングルームのように配置され、学年やクラスが異なっていても、児童同士が誰でも学び合えるようになっていた。「子どもと家族になることが大事なんだ」。日本の学校では思いもしなかった感覚だった。

 校長や保護者の自宅にホームステイし、教育観だけでなく生活そのものに触れることができた。出会った教育者たちは、音楽や演劇など趣味にも興じていた。日々の仕事に忙殺される日本の教員とは対照的に、人生を楽しむ姿がまぶしかった。「教育する側が幸せでないと、子どもたちを幸せにすることはできないのではないか」。そう実感した。

オランダの「イエナプラン教育」実践校の授業風景。教室では対話しやすいように座る=服部さん提供

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 留学中に、日本にいる息子は十七歳になった。自分を産んだときの母親と同じ年齢になり、「多くのことをがまんして育ててくれたと分かった。これからは母のしたいことを応援してあげたい」と周囲に漏らしていた。とはいえ、これだけ長期間、母親と離れて過ごすのは初めてで、留学中は心細かったようだ。昨年末、帰国した日の夕食に手作りのハンバーグを出したら「おいしい」と言って、ボロボロと涙を流した。息子の成長を感じる半面、寂しい思いをさせたとつらい気持ちにもなった。

 「子どもに安心感を与えることは親の仕事」。留学してそんな思いを強くした。息子との関係は少しずつ変わっても、息子はいつまでも息子。母親であることはやめられないのだ。

 教育者としては今、今後の道を考えている。学んだことを生かし、日本に適したやり方で子ども中心の教育を実践したい。だがそれが、これまで日本で勤めてきた学校なのかはまだ分からない。

 帰国後、教育について気軽に話し合える場を設けようと、インターネットを通じ、オンラインで教育談議ができる有料の「教室のえんがわ」を開設。各地の教員や保護者、学生らと意見交換しながら、今後の道を模索している。

 あの国の教員のように、自分の人生そのものを楽しみながら、子どもたちの人生にも向き合えないか。「日本の教育の特長を生かし、教育者も子どもたちも幸せになれるような手法を探していきたい」 (花井康子)

     ◇

 「教室のえんがわ」は「教室のえんがわ ペライチ」で検索。

 

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