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【暮らし】

<清水孝幸の続50代の地域デビュー> (23)地元の銭湯

イラスト・佐藤まさーき

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 地域デビューを始めたのをきっかけに、通うようになった所がある。地元の銭湯だ。そこで何か特別なことをするわけではないが、大きな湯船にみんなと一緒につかれば、一体感を味わえ、地域の一員になったような気分になる。

 ほとんどの家庭にお風呂があり、銭湯に行く機会は減っている。私も四年前まで地元の銭湯に行ったことはなかった。最初の一歩は足が重かったが、思い切って訪れてみると、すぐにお気に入りの場所になった。

 地元の銭湯は、もんじゃ焼きで有名な東京・月島の商店街のビルの二階にある。自販機で入浴料の切符を買い、それを番台で渡して脱衣場に入る。昔の番台は脱衣場の中にあったが、今は待合スペースにあるところが多い。

 脱衣場でロッカーに服を入れ、洗い場へ。中は昭和レトロの雰囲気で、「ケロリン」と書かれた黄色いおけと小さな椅子が並ぶ。二十人も入ったらいっぱいだ。浴槽も古い感じのタイル張りだが、家のユニットバスより足を伸ばせ、リラックスできる。

 平日は常連さんが多い。初心者は土日がお勧めかもしれない。若い親子連れや部活の中高生など新参者のお客さんがたくさん来る。常連さんの中に一人というような疎外感を覚えなくても済む。

 その分、混雑はするが、常連さんたちも嫌な顔をしない。子どもが洗い場で騒いでも温かいまなざしで見守り、中高生が大きな声で話しても怒らない。逆に「今日は野球か」などと話しかけている。銭湯は古くから住む常連さんと、マンションなどの新住民の交流の場にもなっている。

 私は知り合いに会わない限り、あまり話をしないが、銭湯という裸の付き合いの空間にいると、体だけでなく心も温かくなってくる。

 先日、寒さのせいか、脱衣場で湯上がりのお年寄りが倒れた場に居合わせた。当たり前のように、近くにいた人がさっと介抱し、私は番台に人を呼びに行った。倒れた人は少し休むと回復し「ありがとう」と帰っていった。見知らぬ人同士の絆を感じた。

 ここ一、二年は都内の銭湯巡りをしている。最近は豪華な銭湯も増えてきた。地元の銭湯は狭くて古いが、それでも、ここが一番落ち着く。おかみさんには顔を覚えてもらい「おいに似ている」と言われる。すっかり地域の「居場所」の一つになった。

 私の暮らす中央区では、月二回、区民が百円で銭湯に入れる日がある。ただし、身分証明書の提示が必要だ。百円の日に運転免許証を忘れ、それでも顔パスで入れると思ったが、番台の男性に「証明書がないと百円では…」と断られた。常連さんへの道は遠そうだ。

 ※記者(56)が地域に溶け込もうとする奮闘記。次回は三月三日に掲載。 

 

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