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【暮らし】

<食卓ものがたり>元祖甘辛たれ 守り抜く みたらし団子(京都市)

団子を甘辛いたれにくぐらせる中村和子さん=京都市で

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 たれを滴らせながら頬張ると、優しい甘辛さが口に広がる。かむと今度は香ばしさ。勝手に手が次の串に伸びる。

 みたらし団子は、京都市左京区の下鴨神社が発祥とされる。境内の御手洗(みたらし)池に浮いた水泡をかたどったなど、さまざまな言い伝えがあり、古くから神饌(しんせん)として供えられてきた。

 この辺りでは団子は一串五つ。一つ目と二つ目の間が少し空いている。五つの団子を五体に見立てて、全身の息災を願って食べられてきた。

 参道近くに店を構えるのが創業一九二二(大正十一)年の「京菓子司 亀屋粟義(かめやあわよし) 加茂みたらし茶屋」。持ち帰りも店内で食べることもでき、多い日は一万本以上が求められる。「シンプルなだけに、ごまかしがきかないんです」。おかみの中村和子さん(75)は話す。この道四十年や五十年というベテランを含む職人五人が、雑味を取り除いた水で滋賀県産の米粉を練り、沖縄産の黒糖と市内で醸造されたしょうゆでたれを作る。

 甘辛いたれを絡めるのは、この店が始まりという。かつては生じょうゆをかけてあぶっていたのを、終戦直後、中村さんの義父で初代の故弥三郎さんが甘辛いたれを考案。以来七十余年、同じ味が守られている。

 しかし、一口に守るといっても容易ではない。一昨年、長年使ってきたしょうゆの醸造元が廃業することになった。ありとあらゆるしょうゆを試し、皆でおなかがはちきれんばかりに食べ比べ、別の醸造元のしょうゆに行き着いた。「材料が少し違うと味は全く変わる。原料のありがたさを感じながら、この味をしっかり守っていきたい」と中村さんは言う。

 日々の暮らしに感謝し、息災を願って食べるみたらし団子。作り手もまた、変わらぬ味に仕上げられることに感謝する。ぷっくりと丸い団子が、人々の円満な暮らしの象徴に見えた。

  文・写真 丸山崇志

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◆歩く

 みたらし団子発祥の地とされる京都市の下鴨神社の御手洗池。京都三大祭りの一つ・葵祭(毎年5月15日)の禊(みそぎ)の儀や、土用の丑(うし)の日に足を浸して疫病や病封じを祈願する「足つけ神事」などの儀式が営まれる、神社の神事に欠かせない場所だ。

 池の水は湧き水で御手洗川へと流れ、境内にある原生林「糺(ただす)の森」を通って鴨川に注ぐ。多くの市民や観光客の癒やしの場となっている糺の森。池の水は、森と同時に、参拝に訪れた多くの人たちの心も潤している。

 

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