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【暮らし】

若者、保護犬育てて成長 「自立支援」と「殺処分ゼロ」へ試み

雌犬の晴子にえさをやる男性=名古屋市内で

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 発達障害などがある若者の自立支援と犬の殺処分ゼロを同時に目指す取り組みを、名古屋市の一般社団法人が進めている。保健所などから預かった犬を若者がしつけ、犬の引き取り手をみつけやすくするとともに、一つのことをやり遂げることで働く自信をつける。昨年六月に始まり、就労に悩んでいた県内の男性(21)と推定十一カ月の雌犬が、ともに成長する日々を過ごしている。(芳賀美幸)

 「一日の始まりは掃除から。晴子が壁紙をバリバリとはがして、部屋のあちらこちらにうんちをしてしまっていますから」。雌犬の晴子を世話する男性は、部屋の壁を指さして笑う。男性と晴子は、名古屋市中区の一般社団法人「メゾンドファミーユ」が進める取り組みの第一号のペアだ。

 晴子は生後三カ月ほどの時、愛知県内の山間部で動物愛護センターのスタッフに保護され、同法人のシェルターに来た。当初は人間への警戒心や恐怖心が強く、部屋の隅から動かず、三日間、餌も水も口にしなかった。ほどなく男性が担当するようになり、今では名前を呼ぶと近づき、男性の手から餌を食べるようになった。「この調子で人に慣れていってくれれば、いい飼い主さんがみつかるかも」と、男性は首をなでる。

 同法人は基となったNPO法人が二〇一二年に設立され、犬や猫の譲渡会を開いたり、シェルターを運営したりしてきた。これまで六百匹ほどを保護し、その九割以上を新しい飼い主につないできた。

 シェルターは事務所とは別のビル内にあり、約百五十平方メートル。ケージや動物用ベッドなどを備えた五部屋があり、犬猫計五十匹を保護している。今回の取り組みは、シェルターの人手不足を補うため若者の手を借りようと、県内の若者支援団体と連携したことから始まった。

 男性は小学生の時、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。衝動的な行動を抑えられないことがあったり、忘れっぽかったりして、大学を中退後、結婚式場などで働いてきたがどこも一カ月も続かなかった。悩んでストレスがたまり、家族と衝突することもたびたび。就労について相談した支援団体から、シェルターを紹介された。

 もともと動物好きで、農業高校で畜産を学び、動物の扱いには自信があった。それでも、全く人を寄せ付けようとしない晴子には苦労した。しかし「晴子が困った行動をする時は、何か原因があるはず。生活が荒れていた時の自分がそうだったから」と晴子の気持ちを思いやり、一緒に過ごす時間を増やすなど試行錯誤を重ねた。

 以前の職場では同僚とも距離を感じていたが、今は他のスタッフも動物好きで自然と仲良くなった。「こんなに続けられていることに、自分でもびっくり。自信が持てるようになった。晴子とこれからも助け合い、切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」と話す。

 同法人の熊崎純子理事(52)は「アニマルセラピーなどの手法もあるように、動物には癒やしの力がある。(男性は)一生懸命に世話をしてくれていて、晴子にとっても私たちにとっても頼れる存在」と話す。

 今のところ支援団体から紹介された若者は男性だけで、有償ボランティアとして活動している。将来は、ここで自信を取り戻した若者が、一般企業などへの就職だけでなく、シェルターでの活動を仕事として続けていくことも選択肢に入れられるよう、仕組みを整えていく。

 

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