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【暮らし】

<Life around the World> 「イヌ」と共に生きる

 ヒトと動物の付き合いは古くて長い。訓練して狩りに使ったり、命の糧にしたり。ペットとして家族の一員にもなっている。犬猫ブームやパンダ・シャンシャン人気など、動物の話題には事欠かない日本。今年は戌(いぬ)年でもある。世界では、動物とどんな付き合いをしているのだろう。

ソーシャルメディアで人気のコーギー「マーセル」と、飼い主のオーレリー・フォーさん=ロンドンで

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◆英国 女王のお気に入り

 世界最古の愛犬団体といわれるケネルクラブは英国が発祥の地。犬はペットショップでは売られず、ブリーダーやシェルターを通じてしつけられた犬を手に入れる。そのためか、電車でもカフェでも「犬連れ」が日常風景となっている。

 数ある犬の中でも「女王の犬」として有名なのが、英西部ウェールズ原産のコーギー。英メディアによると、エリザベス女王は幼少時に父から一匹をプレゼントされたのをきっかけに、一時は十三匹を同時に飼育。女王の周りに群がるコーギーを、故ダイアナ妃は「動くじゅうたん」と表現したほどだった。

 今でも女王は二匹を飼うが、面会は難しい。そこで「英国コーギークラブ」(www.ukcorgiclub.com)設立者の一人、写真家のオーレリー・フォーさん(37)の愛犬「マーセル」と会うことに。ソーシャルメディアで大人気のコーギーだ。

 マーセルは体毛がふさふさの四歳半の雄。ロンドン市内のカフェ内でも、オーレリーさんの足元で一時間余りもおとなしくうずくまる。「人間の五歳児ぐらいの知能があります」とオーレリーさんは魅力を語る。

 もとは牧羊犬。足は短いが動きは素早く、本来はよくほえる。飼うのは難しそうだが「写真写りがいい」と、インターネット上ではもてはやされる。

 オーレリーさんによると、二〇一二年のダイヤモンド・ジュビリー(女王即位六十周年)やロンドン五輪を通し、「女王の犬」が世界で認知されるようになった。ところが、英国内でコーギーと血統書付きで登録されているのは三百〜四百匹程度。「今や本家の英国より英王室をありがたがる米国の方がコーギーは多く、人気も高い」とオーレリーさんは残念がる。 (ロンドン・阿部伸哉)

◆ドイツ オオカミ愛、絶滅から復活

ウルフセンターで飼育されているオオカミ

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 チュ、チュ、チュ…。人の呼ぶ合図に呼応し、4匹のオオカミが灰色の毛並みを揺らして姿を現した。外見はイヌに似ているが、やや大きく、目が鋭い。なにより野生動物らしい高貴さが漂っている。

 ドイツ北部デルフェルデンにあるテーマパーク「ウルフセンター」。代表のフランク・ファスさん(43)は100年以上前にドイツで絶滅し、2000年から再び生息しているオオカミの生態を見学者に解説する。「イヌの先祖だが異なる動物」「哺乳瓶で人に育てられても、成長すると野生に返りたがる」。北米ロッキー山脈への旅で出合った野生オオカミに魅せられ、センター建設にまい進。10年にオープンした。

野生のオオカミの生態を解説するフランク・ファスさん=ドイツ・デルフェルデンで

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 ファスさんによると、ドイツでのオオカミ復活の要因は野生動物保護規制。旧東西ドイツの1990年の統一後、旧西ドイツの保護規制が受け継がれ、オオカミが東方のポーランドから移入しやすくなった。2015〜16年に確認された群れは60で成体数は推定150ほど。繁殖が進むにつれ、多くの見学者がセンターに来るようになった。

 一方、野生のオオカミが家畜を襲うケースが続出。15〜16年は700匹が犠牲になり、家畜農家と動物保護団体の対立が激化。メルケル首相らの連立政権交渉の議題にもなった。

 ファスさんの見るところ、ちまたの議論は「オオカミ規制派」が優勢だ。しかし「人とオオカミは共生できる」と固く信じる。

 ロッキーの麓で遭遇したオオカミは常にファスさんと一定の距離を保った。「満月の夜に凶暴化する伝説もあるが、人を襲うことはめったにない」。オオカミにまつわる誤解を解こうと、ファスさんの解説には一層の熱がこもる。

 (ドイツ北部デルフェルデン・垣見洋樹、写真も)

◆米国 刑務所で訓練、育む絆

目覚まし時計の音に反応し、ベッドに駆け上がったグリー。受刑者の訓練で成長した

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 目覚まし時計のベルが鳴る。サッと立ち上がってベッドに飛び乗り、寝ている人の胸元を前足で軽くたたくのは、二歳の雑種犬グリー。耳の不自由な人に音を知らせる聴導犬として訓練されたが、人が集まる場所でほえる癖が直らず、こうやって聴導犬の役割を実演するのが今の仕事だ。

 米東部マサチューセッツ州ボストン近郊で聴導犬などの補助犬を育てているNPO「NEADS(ニーズ)」。訓練犬のうち実際に補助犬になれるのは六割程度。二〇一七年は四十匹が体に障害のある人や心的外傷後ストレス障害に悩む退役兵のもとに巣立っていった。

「フェッチ(取ってきて)」との指示で携帯電話を拾うローレン=いずれも米マサチューセッツ州ボストン近郊で

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 通常二年弱の訓練期間中、犬は一年以上を地元の刑務所で過ごす。グリーもそう。空き地で生まれたところを保護され、NEADSへ。男性受刑者と十四カ月間、寝食をともにしながら「伏せ」「待て」という基本姿勢から、物を取ってくる、電気器具のスイッチを入れるなどの技まで、五十〜六十の動作を教わった。

 「こんな大柄な人。グリーには、赤ちゃんをあやすように話し掛けていたわ」。男性に手ほどきした訓練責任者のキャシー・フォーマンさん(73)は両手を大きく広げ、目を細める。「訓練で生まれる絆。そんなつながりを知らずに生きてきた受刑者も多いのでは」

 刑務所での訓練は一九九六年から。受刑者の目標づくりや技能習得を目指す刑務所と、移動することなく効率的、効果的に訓練したいNEADSの思惑が合致した。飼い主が決まると犬とともに受刑者を訪ねる。人助けに役立っていると実感してもらうためだ。

 刑務所で補助犬を育てた受刑者をいつか職員として迎え入れたい。NEADSの最高経営責任者ゲリー・デロッシュさん(68)が思い描く目標だ。 (ニューヨーク・赤川肇、写真も)

 

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