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【暮らし】

血液がん「多発性骨髄腫」の治療 新薬登場 選択肢に幅

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 血液がんの一つで、中高年での発症が多い「多発性骨髄腫」の治療が新しい段階に入っている。以前は治療が困難な病気だったが、ここ数年で治療薬が増えて選択肢が広がるとともに、治療効果が高い抗体製剤も発売された。進行する前の治療が重要になるため、健康診断でいち早く発見し、適切な医療機関にかかることが大切だ。 (稲田雅文)

 東京都の女性(55)は二〇一一年、毎年受診していた人間ドックで血液中の総タンパクが多いと指摘され、精密検査を勧められた。都内の病院を受診すると、多発性骨髄腫と診断された。「自覚症状はまったくなかった」と話す。

 多発性骨髄腫は現状では、ある程度病気が進行してから治療を始める。早期に始めても効果に違いがないためだ。女性の場合は、自覚症状はなかったものの、一四年に異常なタンパク質の数値が基準を超えたため治療を開始した。

 がんである骨髄腫細胞の増殖を抑える分子標的薬を投与された後、一五年二月に入院して自分の正常な造血幹細胞を移植する治療を受けた。しかし、退院後すぐに異常なタンパク質が増えだした。女性は「次にこの治療を受けたら何年か持つ、さらにこの治療で何年持つと、余命を意識した」と振り返る。

 一五年五月、新たな治療に入る前に、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)でセカンドオピニオンを聞くことにした。鈴木憲史・骨髄腫アミロイドーシスセンター長が提案したのが、当時から治験を進めていた抗体製剤「ダラツムマブ」と、骨髄腫細胞の増殖を抑える免疫調節薬などを組み合わせた治療だ。

 ダラツムマブは、骨髄腫細胞の表面にある特徴的な目印に結合する。免疫機能で攻撃されやすくなり骨髄腫細胞が減る。女性は通院で月一回の点滴を受けると、半年ほどで異常なタンパク質の数値が下がり、病状が治まった状態である寛解になった。

 ダラツムマブは昨年十一月に発売され、どの医療機関でも使えるようになった。女性は今後も月一回の点滴が必要になるが「もしこの治療が効かなくなっても、生き延びればまた良い薬ができる」と前向きだ。

 鈴木センター長は「血液検査で異常が見つかり、自覚症状が出ないうちに理想的に治療ができたケース」と評価する。多発性骨髄腫は二十年ほど前までは治療法が少なく、腎臓障害で人工透析が必要になったり、背骨が折れたりと厳しい経過をたどったあげくに、発病後三年ほどで亡くなる病気だった。

 最近は、骨髄腫細胞の性質が解明されつつあり、薬がつくりやすくなったという。発病後の余命は平均七年ほどに延び、今後は十年以上になると予測されている。治療も入院をせず、仕事を続けながらできるようになった。鈴木センター長は「ダラツムマブで、延命ではなく治癒が目指せる可能性がある。治療方針も変わりつつあり、初期の段階から強力な治療を選択したり、発病前から予防的に治療したりする考え方も出てきた」と語る。

 課題は高額な薬剤費だ。新薬を駆使した多発性骨髄腫の治療は月百五十万〜二百万円かかる。高額療養費制度で患者の負担は上限があるものの、継続的な治療が必要で負担は重い。鈴木センター長は「寛解が続いている人には薬の投与をやめる検討も始まっている。確実に効果がある治療法の研究をさらに進める必要がある」と指摘する。

<多発性骨髄腫> 骨髄にあり免疫にかかわる「形質細胞」が骨髄腫細胞へとがん化する病気。正常な形質細胞の働きが妨げられて免疫機能が低下するほか、骨髄腫細胞が異常な抗体を大量につくるため、腎臓障害などを起こす。破骨細胞が刺激されることで骨の破壊も進む。年間約7000人が発症。40歳未満での発症はまれで、年齢が上がるにつれて発症数が増加する。

 

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