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【暮らし】

<ともに>A型事業所の挑戦(上) 目指せ「脱・内職」

自転車を組み立てる利用者たち=名古屋市西区のサイクルサービスなごやで

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 カチャカチャ、カンカン−。名古屋市西区の「サイクルサービスなごや」の作業場に、金属をたたく音が響く。

 この作業所は、障害がある人が働く就労継続支援A型事業所(A型)。同じ名称の一般社団法人が運営する。雇用契約を結んだ障害者(利用者)たちが最低賃金以上の時間給を得て、放置自転車を整備し直して販売している。車体のさびを落としたり、部品を交換したり。おしゃべりする人もなく、皆、目を皿にして自転車を見て手を動かす。

 現在の利用者は精神障害者を中心に十九人で、障害がない人の支援を受けながら一日四〜五時間働く。一台完成させるのに、早い人で三日はかかるが「入社後一カ月ほどで、私が横につかなくても作業ができるようになる」と、指導員の岩田一磨さん(27)は言う。

 A型をめぐっては昨年、名古屋市や岡山県倉敷市などで事業所が破綻し、利用者たちが解雇される事案が続いた。これらの事業所では、本業で利益を出せず国の給付金頼みの運営となっていたところ、国が給付金の使い方を厳格にしたことなどで、行き詰まった。障害者の労働環境の向上などに取り組むNPO法人「共同連」(名古屋市北区)によると、全国で七割以上のA型が赤字に陥っているという。それに対し、サイクルサービスは堅実にもうけを上げている事業所だ。

 とはいえ、最初は給付金に助けられた。「お客さんが付くまで時間がかかる。普通の会社なら赤字だが、A型だから運営できた」。運営する法人の代表理事、稲葉勝哉さん(45)は振り返る。

 当初は、仕事の確保に必死だった。壁紙の端材を利用したエコバッグ作りなどの内職もした。利用者が増え、自転車事業だけでは仕事が足りなかったからだ。しかし、体を動かし集中して働き、元気になっていく人たちを見て、同じ作業を繰り返す内職は「利用者のためにならない。単価も合わない」と一カ月でやめ、生き生きと働ける仕事を探した。

 求人広告に名古屋駅周辺にあるビジネスホテルの清掃の求人が常に載っているのに目を付け、営業をかけた。「精神障害者は突飛な行動をするイメージがあるかもしれないが、礼儀正しく真面目な人も多い。薬で動作がゆっくりになることもあることなど、ホテルの担当者にしっかり説明した」と話す。現在はホテル二軒と契約し、利用者は自転車と清掃の仕事を交互にこなす。

 一年半前から働く三十代女性は、発達障害とうつ病がある。以前勤めていた別のA型では一日四時間、くぎの袋詰めをしていた。「単調な作業だと、余計なことを考えて精神的にしんどくなる」と転職してきた。「目の前の仕事に集中できるし気持ちが楽」と笑う。

 作業所には、自転車を求める客も来る。「お客さんの顔が見えると、ぴりっとした空気になる。『もうちょっときれいにしよう』とか、そういう気持ちが出てくる。その結果、自転車の品質が高くなれば、値段を高くしても満足してもらえる」と岩田さんは話す。

 ×   × 

 障害者の大量解雇問題を受け、あり方が問われているA型事業所。障害者がする事業で利益を上げ、事業所も安定し、利用する障害者も継続的に働ける場とするには、何が求められるのだろうか。 (出口有紀)

<就労継続支援A型事業所> 一般就労が難しい障害者が事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の時間給で働く。2006年に制度が設けられた。支援する職員の人件費などに充てる給付金などが国から支給される。営利法人の参入も認められ、13年4月の全国約1600カ所から、17年4月には約3600カ所に急増した。同年夏には、名古屋市など全国6カ所でA型を運営する会社が破綻し、計約150人が失業した。岡山県倉敷市や広島県の福山、府中両市などでも同様の問題が起きた。

 

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