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【暮らし】

民事信託 家族らと契約 生前から財産管理託す

 「認知症や病気になったら、財産はどうなるのか」−。判断能力のある元気なうちに、財産に関する要望を契約という形で残す「民事信託」と呼ばれる制度にここ数年、関心が高まっている。生前から財産の運用や管理を家族や親族に託せるのが特徴。相続での遺言代わりにもなり、親族間でもめる「争族」対策にもなると期待される。 (砂本紅年)

 民事信託は、信頼できる人に財産管理などを託す契約を指す。このうち家族や親族と交わす契約は「家族信託」とも呼ばれる。「信託」といえば、信託銀行などに信託報酬を支払って財産を託す「商事信託」が一般的だったが、二〇〇七年の改正信託法施行で非営利目的ならば家族にも財産を託せるようになった。

 埼玉県の七十代男性は約二十年前、自宅近くに所有する土地にマンションを建設。賃貸物件として経営に携わっていたが、ここ数年体調がすぐれず、管理業務がつらくなっていた。

 贈与も考えたが、財産を失うことに抵抗感がある上、多額の税金もかかる。だが万が一認知症になれば、自分の判断で売却や大規模修繕などはできなくなり、マンション経営にも影響が出かねない。悩んだ末、司法書士や税理士、家族と話し合い、民事信託の利用を決めた。

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 民事信託の仕組み=図=は、財産を預ける人(委託者)、財産を預かって管理・処分する人(受託者)、財産から生じる利益を受ける人(受益者)からなる。

 このケースでは、委託者の男性が、受託者の長男にマンション管理などを任せる信託契約を結んだ。形式上の名義は長男に移るが、受益者が男性のままなので、管理費用を引いた家賃収入は男性に入り、贈与税もかからない。

 民事信託では、委託者の死亡後も契約の効力を継続させることが可能で、このケースでは、男性の死亡後は、受益者が妻と長男、次男に移る契約にしてある。名義は長男のままだが、この時に三人に遺贈したとみなされ相続税がかかる。遺言代用にもなり、相続トラブルや妻の生活不安も軽くなり、男性は「(契約で)安心して生活できるようになった」と満足しているという。

 家族信託普及協会の会員で司法書士の根本偉弘(たけひろ)さん(東京)は「民事信託は、その人の実情に応じてオーダーメードで契約を作れるのがメリット」と話す。

 類似制度では、認知症など判断能力が不十分な人のために財産管理などを代わって行う後見人などを家庭裁判所に申し立てる「成年後見制度」があるが、本人の財産保護が主な目的。例えば親の自宅を売却し、老人ホームの入居費を工面したいと思っても、親の財産を侵害すると判断されれば裁判所の許可は得られない。相続税対策や積極的な資産運用は原則としてできず使い勝手が悪かった。

 一方、元気なうちに契約する民事信託は、不動産の売却や、新たな賃貸借契約、ローン借り換えなども柔軟にできる。

 ただ、個々の実情を反映した契約書の作成には、制度に精通した司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが必要で、報酬は信託財産の1%程度とするケースが多い。財産の価値にもよるが、専門家に頼んでも申し立て費用が十万円程度で済む成年後見制度に比べるとコストがかかるのが難点とされる。

 民事信託では、受託者が財産を正しく管理・運用しているか監視する監督人を自ら選ぶことが可能。報酬は多くの場合、月数万円で、裁判所が監督人を選任する後見人制度と同じ程度という。

 根本さんは「利用者で多いのは、不動産など資産が多い人や、経済的な支援が必要な障害者が親族にいる人など。家族での話し合いのきっかけづくりになるのでは」と話している。

◆民事信託のポイント 

・万一の時の財産管理に備え、オーダーメードの契約が作成できる

・財産の名義を受託者に変更しても、委託者と受益者が同じなら贈与税はかからない

・成年後見制度と違い、資産運用や相続対策などもできる

・本人の死亡後に効果が生じる遺言と違い、原則契約を結んだ時から効果が生じる

・費用が成年後見制度と比べ多額

・制度に精通した専門家に相談することが大切

 (根本偉弘さんへの取材を基に作成)

 

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