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【暮らし】

子どもが苦手な注射 気をそらし痛み軽く

小暮裕之さん(後方)が見守る中、注射の後もケロリとした表情で風車を吹く野口紗恵ちゃん=東京都江東区で

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 注射は痛くて当たり前−と思われがちだが、気をそらせる工夫や、肌に塗ったり貼ったりする麻酔剤などで痛みを減らし、不安や恐怖をある程度、取り除くことができる。乳幼児期は予防接種が多いが、痛みや恐怖の記憶が強いと、将来、痛みに過敏になることもある。注射の痛みをやわらげる方法などを専門家に聞いた。 (竹上順子)

 東京都江東区の有明こどもクリニック豊洲院。院長の小暮裕之さん(39)が「痛い注射と痛くない注射、どっちがいい?」と聞くと、予防接種で来た野口紗恵ちゃん(4つ)は「痛くないの」。小暮さんは「じゃあ準備するね」と紗恵ちゃんの腕を氷枕で冷やし、もう一方の手に風車(かざぐるま)を握らせた。紗恵ちゃんが風車を吹くことに集中するうち、痛がることなく注射は終わった。

 同クリニックは八年前、注射の痛みを減らす工夫を始めた。「予防接種は良いことなのに、子どもは嫌がり、親は『ごめんね』と謝る状況を変えたかった」と小暮さんは言う。

 会話のできる二、三歳より上の子とは、注射について話してから冷やすことなどを提案。風車を吹くと、おなかに力が入って深呼吸が促され、痛みの軽減につながる。映像や音楽で気をそらせることもある。赤ちゃんに注射をするときは、母乳を与えたり、医師の方を向かせず母親が胸に抱いて安心させる。

 また昨年からは、年齢を問わず希望者に、塗る外用局所麻酔剤「エムラクリーム」を使い始めた。こうした取り組みで、泣く子は半分に減ったという。

 紗恵ちゃんの母親の恵理子さん(39)は「別の病院で予防接種した小学一年の子は、すっかり注射嫌い。こんな方法があるなんて知らなかった」と話した。

◆「痛みに過敏」防ぐ効果も

 日本では長年、注射などの痛みは「仕方ない」「我慢が大事」とされてきた。だが日本大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)痛みセンター長で診療教授の加藤実(じつ)さん(61)によると、最近は手術やがん治療などを通じ、「痛がらせる」ことは治療控えなどの弊害を生むと分かり、医療行為に伴う子の痛みへの関心も高まりつつあるという。

 痛みの影響は「今」だけにとどまらない。小児期の痛みや、それに伴う不安と恐怖が、将来も人を痛みに敏感にさせることを欧米の学者らが約三十年前に突き止めた。以来、予防接種時などの痛みを減らす方法が研究されてきた。

 研究の先進地のカナダでは、薬理学者らが対処法をインターネットで公開。日本では数年前に「エムラクリーム」などの外用局所麻酔剤が医師の処方で使えるようになったが、カナダでは処方箋なしで薬局でも購入できる。

 世界保健機関(WHO)は二〇一五年、予防接種時の痛みの軽減についての方針を公表。痛みへの対処がなされなければ、接種率の低下につながると警鐘を鳴らす。

 加藤さんは、子どもへの予防接種の意味の説明や、落ち着いて接種できる環境も必要と指摘。日々の診療で忙しい医療者には、「痛みを和らげることは基本的人権の尊重」とし、「子どもの将来を考え、エビデンス(科学的根拠)のある『痛がらせない』方法を取り入れてほしい」と呼び掛ける。また保護者にも、積極的に医師らに相談するよう勧めている。

◆痛みや不安を減らす主な方法

・事前に予防接種の意味や対処法を話す

・むやみに励まさない(より注射が気になる)

・外用局所麻酔剤を使う

・乳児は母乳か砂糖水を飲ませる

・乳児は保護者が胸に抱く(縦抱き)

・絵本やビデオを見る

・音楽を聴く風車、シャボン玉を吹く

※カナダ「HELP in Kids & Adults」の冊子などを基に作成

 

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