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【暮らし】

<守りたい 発達障害女児の支援> (上)つけ込まれ性被害も

フェルトで作った臓器の模型を使い、体の構造を説明するスタッフ=名古屋市昭和区で(ルーチェ提供)

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 数人の女児が、エプロンをしたスタッフの話に耳を傾け、時折、自分のおなかをのぞき込む。「子宮には、赤ちゃんを育てる役割があります。赤ちゃんはお母さんとつながっているへその緒から栄養をもらうんだよ」。内臓をかたどったフェルトが貼り付けられたエプロンや模型を使い、スタッフが生理の仕組みや妊娠、出産について説明する。

 ここは、二〇一三年に開設した名古屋市昭和区の発達障害児向け放課後等デイサービス「Luce(ルーチェ)」。発達障害がある子どもたちが、放課後を過ごし、社会生活に困らないよう療養プログラムを受ける。ただ、発達障害があるのは男児が多く、そのため療育も男児中心になりがち。ルーチェは、女児向けのプログラムを取り入れている数少ない施設だ。

 発達障害の女児は男児より暴力的な問題行動が少なく、周囲からは障害が分かりにくいことも多い。しかし、内面の発育が遅れ気味で、小学校高学年になっても人にまとわりついたりする子もいる。ルーチェが女児の療養に力を入れるのは、それが相手の男性に「好意」と捉えられたりすると、性犯罪に至る危険があるからだ。

 昨年六月には、神奈川県平塚市で障害児向け放課後等デイサービスの職員の男=当時(39)=が、施設利用者の女子中学生にホテルでいたずらをする事件があった。男は子どもたちの送迎や食事の補助、宿題の手伝いなどをしており、距離感が近くなりすぎたことが背景にあるとみられる。

 「手をつないだり、ほっぺにキスしたりしていいのは家族だけ」「(胸や下腹部などの)プライベートゾーンを見せるのは、健康を守る必要があるときね」。ルーチェの施設長藤原美保さん(48)は、女児たちにこう言い聞かせる。

 ルーチェではこうした性教育の時間を週に数回、設けている。言葉では分からずパニックになる子も多いので、イラストや模型などの独自教材を使い、繰り返し伝える。藤原さんは「小さいときから自分の体と心を大切にすることを教え、年齢や発達段階に応じた内容を教えている」と話す。

 藤原さんは以前、スポーツクラブでインストラクターをしていた。十年ほど前、発達障害がある子のレッスンを依頼されたことをきっかけに、その子たちを支援した。すると、女児には性被害に遭ったり、大人になってもだまされて風俗店で働かされたり、望まない妊娠をしたりするケースが多いことを知った。第三者が現場にいたとしても、被害に遭った女児や女性の外見では障害が分かりづらく、男が「合意の上」などと言い張ると、被害を受けたとは分かってもらえない。

 毎日や週に数回など頻度に違いはあるが、ルーチェに通う女児は現在、全部で三十五人ほど。藤原さんは、こう力を込める。「障害につけ込まれて被害を受けるという危険を避ける方法を教えるのは、成長してからでは遅い。できるだけ早くから教え、この子たちを守りたい」

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 発達障害の子ども向けの療育施設が増えてきた。しかし、女児向けの療育プログラムを提供する施設はごくわずか。どう支え、どう導けば守ることができるのか。「ルーチェ」の取り組みを紹介する。 (花井康子)

<発達障害> 脳機能障害の一種で、自閉症や注意欠如多動性障害(ADHD)などさまざまな障害の総称。先天的な特性で、根本的な治療法は確立されていない。知的障害を伴わない場合もある。相手の気持ちを読むのが苦手▽イメージ力や先を見通す力が弱い▽順番を待てない▽こだわりが強い▽忘れっぽい−などの特性があるが、個人差がある。

 

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