東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<食卓ものがたり>潮風が運ぶ真心の味 ハーブティー(岩手県宮古市)

4種類のハーブをブレンドした「潮風のハーブティー」を入れる古舘富士子さん=岩手県宮古市で

写真

 海に向かって開けた山の間から、三陸の潮風が吹き抜けてくる。東に四キロ離れた湾からの風の通り道に、岩手県宮古市の「潮風のハーブ園」はあった。

 畑約五十アールでカモミールやペパーミントなどハーブ約五十種類を育てているのは、古舘(ふるだて)富士子さん(59)。「ミネラルを含む海からの風がハーブを乾燥させ、ほのかな潮の香りもつけてくれる」と話す。

 主に露地で栽培。農薬も機械も使わない。少量ずつ摘み取っては、地下水で丁寧に洗い、風と相談しながら二、三日かけて天日干しする。収穫期には地域の人の手も借りるが、基本的には一人での作業だ。

 古舘さんは二〇一一年の東日本大震災の津波で、漁協職員の夫を失った。収入源だったトウモロコシは野生動物の被害に遭い続け、一三年には栽培を担ってきた義母(87)が膝を痛めてしまい、いよいよ追い込まれてしまった。

 窮地を救い、家計収入の柱となったのがハーブだった。古舘さんは二十年以上前から「自分の代で何かを始めたい」と畑の一画でハーブ栽培を続けてきた。四種類をブレンドして「潮風のハーブティー」の名で商品化したこともあり、品質には自信もあった。県の起業促進事業に応募して選ばれ、一四年一月から本格的な栽培を始めた。

 「頑張った日のごほうびに飲む」「ぐっすり眠れる」。地元人脈や口コミで評判は広がり、この四年間に県内の百貨店やホテルなどに販路が広がった。遠く島根県からも注文が来る。

 手作業で乾燥させたハーブは、葉や花が元の形をとどめているのが特徴。「フレッシュハーブティーのような新鮮な香りを楽しんでほしいから」という古舘さんのこだわりだ。お湯を注ぐと摘みたてのようなさわやかな香りが立ちのぼる。

 七年前の大震災を境に、多くのことが変わった。「海のことでいっぱい泣いた。でもやっぱり海の恵みで生きている」。ほぐれて浮かぶ緑の葉や黄色い花を見て古舘さんの表情が緩む。

 金色のハーブティーを飲み干した。舌に残るのは潮風の、まるで涙のような優しい味だった。

 文・写真 今川綾音

写真

◆買う

 「潮風のハーブティー」は、岩手県内の道の駅やホテルのほか、東京都中央区銀座の同県アンテナショップ「いわて銀河プラザ」で販売。全国に郵送もしている。「爽快ブレンド」と「やすらぎブレンド」の2種類(32杯分、各972円)=写真右奥=があり、昨年末にはティーバッグタイプ(6袋入り、各540円)も登場=同左奥。注文は、電話かファクス=いずれも0193(63)2854=で。ホームページ(「潮風のハーブ」で検索)から注文用紙のダウンロードもできる。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報