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【暮らし】

<家族のこと話そう>いじめ対策 母と考えた 作家・大宮エリーさん

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 両親は心配性なのに、私は行き当たりばったりな性格。いつも「なんでこうなるんだろう」と思いながら生きてきました。

 植物の研究者を目指して東京大に進学後、父がぜんそくの発作で倒れたことがありました。救急車が来るまで背中をさすることしかできませんでした。父のような人を助けたいと、薬学を専攻することにしました。

 でも、マウスへの注射などの動物実験がかわいそうでできず、研究者はあきらめました。研究者に向いてないと分かったのが最初の挫折でした。薬剤師の国家試験があったのは、ブラジルのリオのカーニバルと同じ日。サボるよりスケールが大きいと思って、現地に行きました。後日、母には「うちの子じゃない」と言われましたが。

 そんな母は、私が小学四年生のころ、いじめられていた時に心の支えになってくれました。翻訳者だった父の仕事の都合で、幼いころ大阪から東京に引っ越してきました。関西弁で話すと「何を言ってるか分からない」と言われ、服装もけなされました。自分に落ち度があると思っていましたが、母は「あなたに問題があるわけではない」と断言。いじめに対し、ボケで切り返す方法も一緒に考えてくれました。

 一方、父は仕事が忙しくて、あまりかまってくれませんでした。私が、東大に行きたいと言ったときには「女は大学に行かなくていい。結婚できなくなる」と言われましたが、予言は当たってますね。

 就職活動では三十三社に落ち、ようやく内定が出た広告代理店でコピーライターになりました。広告はモノを広く知らせる仕事で、職人芸です。天才のような独創性を持っている必要はなく、仕事は楽しかったです。ただ、出張の申請書など、当たり前にできそうな事務仕事が苦手で七年間勤めて、辞めました。

 独立後は依頼された仕事をすることで、次の声が掛かり、美大卒でもないのに絵画や美術関係の仕事もしています。初めてのことでも、今までの仕事にヒントがあるので勇気を出してやっています。

 父は十年ほど前に亡くなりました。母とはたまに会うのですが、この前は茶葉をガムのようにかんでいました。見た目にも悪く、やめるよう説得しましたが「緑茶は風邪の予防にいい」。反論はおもしろいですが、身内となると疲れます。しんどいことは笑いに変えるとストレスが減るので、たまに母のことをネタにエッセーを書いています。母も読んでいると思いますが、怖くて感想を聞いたことはありません。

  聞き手・出口有紀/写真・由木直子

<おおみや・えりー> 1975年、大阪市生まれ。東京大卒業後、広告代理店に勤務し、2006年に独立。演出家や画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどとして活動。著書は「生きるコント」「思いを伝えるということ」(いずれも文春文庫)など多数。近著のエッセーは「なんでこうなるのッ?!」(毎日新聞出版)。

 

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