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【暮らし】

早期腎がん治療 全摘せず「部分切除」で

直径約3センチのがんができた腎臓のCT検査画像(近藤恒徳教授提供)

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 腎臓の摘出が基本とされてきた早期の腎がんの治療が、大きく変化している。がんと周囲の組織だけを切り取って腎臓は残す「部分切除」手術が主流になりつつあるのだ。ただ現在は過渡期で、全国どこでも同じ治療が受けられる状況ではない。専門医は「治療法を選ぶには、主治医らに納得いくまで説明を聞いて判断することが大切」と話す。(吉本明美)

 腎臓は長さ十〜十二センチのソラマメ形の臓器で、肋骨(ろっこつ)の下辺りに左右一つずつある。最大の役割は、血液から不要な成分をろ過して尿をつくること。

 腎がんは、毎年新たに診断されるがんの2%程度と少ないものの、高齢化などの影響で患者は増えている。早期はほぼ無症状のため、だいぶ進行してから見つかる例が以前は多かったが、北海道大の篠原信雄教授(腎泌尿器外科)によると、画像診断が進歩し、近年は事情が大きく変わった。

 「中高年男性が超音波検査で『腎臓の小さな影』を指摘され、コンピューター断層撮影(CT)で早期がんと確定診断される。これが典型例です」と篠原さん。診断される腎がんの四分の三は直径七センチ以下で転移がない早期がん。多くは直径四センチ以下だという。

 腎がんの標準的な治療法は長く腎臓を摘出する「腎全摘手術」だった。丸ごと取ってしまえば再発のリスクを最小限にできるはず−との考えに基づく。

 しかし一九八〇年代の終わり、部分切除でも再発はそれほど増えないとのデータを米国のチームが発表したのをきっかけに、九〇年代以降、部分切除に取り組む医師が国内でも少しずつ増えていく。篠原さんのほか、東京女子医大東医療センターの近藤恒徳教授(泌尿器科)もそうした一人だ。

 近藤さんによると、部分切除にさらに関心が集まったのは二〇〇六年で、部分切除の方が全摘より腎臓の働きが良いとのデータが発表された。その後、欧州で行われた臨床研究で、部分切除と腎全摘手術で、手術後の生存率に差がないとの結果が出た。「生存率以外のメリット・デメリットを総合的に比較して手術法を選ぶ時代になったということです」と近藤さんは説明する。

 四センチ以下の腎がんの手術後の五年生存率は九割を超すという。篠原さんは小さい腫瘍では良性と悪性の事前診断が困難な例が10%程度あることを挙げ「手術後に良性と分かる場合もあることを考えると、部分切除に軍配が上がる」と言う。

 日本泌尿器科学会は一七年版の腎がんの診療指針で、四センチ以下のがんの部分切除を「強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる」とした。

 一方、早期でも直径四〜七センチとやや大きめのがんの治療については、篠原さん、近藤さんとも「できた場所や患者の年齢、施設の経験などを踏まえて個別に判断すべきだ」と言う。

 篠原さんは「現状ではその施設が最も安全確実に実施できる手術法を選ぶべきだ」とした上で、「まず主治医から納得いくまで説明を聞き、できれば腎がんに詳しい別の医師の意見も聞いた上で、じっくり考えて決めてほしい」と話す。

 

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