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【暮らし】

<始まる民泊>ヤミ営業(上) 居住実態のない借り主

民泊の仲介サイトに掲載されていたヤミ民泊のページ。「格安アパート」「宿泊人数4人」などの宣伝文句が並ぶ=理事長の男性提供(一部画像処理)

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 六月から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)により、民泊の全面解禁が近づく中、対策が急がれるのが無許可の「ヤミ民泊」問題だ。国の調査によると、すでに国内で運営されている民泊の実に八割以上で違法営業のおそれがあり、周辺住民とのトラブルは絶えないという。今後、民泊が市民権を得るためには、一刻も早い規制が必要だが、果たして新法によりどこまで進むのか。ヤミ民泊の実態を踏まえ、三回にわたって検証する。 (添田隆典)

 「隣の部屋から昼も夜も大きな騒ぎ声がしてうるさい。ドアを思い切り開け閉めしているらしく、その音まで響いてくる」

 東京都内の十二階建て分譲マンション。管理組合の理事長を務める四十代の男性が苦情を耳にしたのは、二〇一五年夏のことだった。苦情があったのはワンルームの部屋。持ち主が仲介業者を通じて賃貸に出していた部屋で、当初は借り主が騒いでいるのだと思い込んでいた。

 ほどなくして、今度は管理人から「最近、ごみ出しのルールを守らない住民がいる」と苦情が。マンションの中にあるごみ置き場を調べると、ビールの空き缶や空き瓶、お菓子の袋などを一緒に入れたコンビニのポリ袋が放置されていることが何度もあった。「普段、見ない外国人が最近、キャリーケースを提げて出入りしている」とも。マンションには百人以上が住んでいたが、日中、エントランスの管理室に座って住民の出入りを見ている管理人には、違いがすぐ目に付いた。

 「郵便受けの前で、旅行者らしき大柄の白人がうろうろしている」。見慣れぬ外国人の姿は住民たちの目に留まり始めていた。管理会社の担当者は「旅行者は欧米系、アジア系と国籍を問わなかった」と振り返る。

 手がかりを探ろうと、男性たちは試しにインターネットで自分たちのマンションの名前を検索すると、民泊の大手仲介(予約)サイトに、問題の部屋が掲載されていることが分かった。ダブルベッドが置かれた室内の写真とともに「一泊八千円、宿泊人数四人まで」と紹介されている。「very good location(非常に立地がいい)」。宿泊したとみられる外国人のレビュー(評価)も寄せられていた。

 確かに、マンションは駅から徒歩圏内で都心へのアクセスも悪くない。しかし、民泊を始めるとの報告を管理組合で受けたおぼえはない。民泊は旅館業法にのっとって、保健所の許可が必要だったが、フロントを設置しないといけないなど、許可を得ていないのは明らかだった。

 六月から施行される民泊新法では、都道府県に届け出さえすれば、民泊は手軽に営業できるようになる。ただ、営業日数が年間百八十日に制限されるなど規制は厳しく、届け出をしないヤミ営業が残る不安はつきまとう。

 「まさか自分たちのマンションの一室が、知らない間に民泊に使われているとは」。苦情の原因を突き止めたという気持ち以上に、男性はあぜんとした。

 営業をやめさせようと、管理会社とともに、持ち主に連絡を取ったが、「誰が借りているかも知らない。仲介業者に聞いてくれ」。だが、事情を知っているだろう借り主とは連絡さえ付かなかった。借り主には居住実態すらなく、民泊を営業する目的で部屋を契約した疑いがある。

 手をこまねいている余裕はなかった。さらに驚く事態が発覚した。

 

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