東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<始まる民泊>ヤミ営業(中) オートロック 番号筒抜け

ヤミ民泊の騒動以降、マンション入り口には「民泊禁止」と3カ国語で表記した張り紙を掲示している=東京都内で(一部画像処理)

写真

 二〇一五年の師走。東京都内の分譲マンションで、管理人がいつものようにエントランスの管理室にいると、外国人旅行者が近づいてきた。マンションではその年の夏、無断で民泊が営まれていることが発覚し、宿泊客らによる騒音やゴミの問題に頭を悩ませているところだった。

 管理人に近寄ってきたその旅行者は何かに困った様子で、スマートフォンのメール画面を差し出してきた。それを見て、管理人は言葉を失った。画面には、マンション裏口のオートロックを解除する暗証番号、民泊に使われている部屋の郵便受けのダイヤルロックを開ける方法が日本語で書かれていた。文面の通りに郵便受けを開けると、小さな箱の中に部屋の鍵が入っていた。

 メールに書かれていたのは、“チェックイン”の手順。民泊を無断営業する部屋の借り主が、旅行者に送ったようだが、旅行者は日本語が読めないため、その場にいた管理人に助けを求めてきたのだ。説明文は、管理人の目に触れないよう、マンションの表玄関ではなく裏口から入るよう周到に指示もしていた。

 住民しか知らないはずのオートロックの番号が宿泊客に筒抜けになっている。鍵の管理も宿泊客に任せきりとなれば、合鍵を作られたり、第三者の手に渡って悪用される恐れもある。

 「これ以上は見過ごせない」。管理組合の理事長を務める四十代の男性や管理会社は弁護士に相談。本人確認をせずに鍵を受け渡すのは旅館業法違反にあたり、防犯・防災面の安全を脅かしているのは管理規約にも反するとの助言を受け、民泊の即時中止を求める文書を、部屋の持ち主と借り主宛てに送った。先方が「受け取っていない」と、しらを切れないよう内容証明郵便の形にして。

 効果はすぐに表れた。数日後に民泊の予約サイトを確認したところ、部屋の情報はなくなっていた。借り主がサイトに掲載していた情報を削除したようだ。ほどなく旅行者の出入りもなくなり、問題の部屋から生活音もしなくなった。それまで知らぬ存ぜぬの対応だったことを考えるとあっけなかったが、半年間に及んだ民泊騒動にようやく終止符が打たれた。

 管理組合では、再発防止のため管理規約の改正にも着手した。臨時総会を開き、部屋の所有者全体の八割以上の賛成を得て、民泊やシェアハウスなど営利目的で宿泊や滞在に部屋を提供することを禁止する文言を盛り込んだ。マンションの掲示板には日本語、英語、中国語の三カ国語で「民泊禁止」と書いた張り紙も掲示。幸い、あの一件以外、マンション内で民泊は行われていないという。

 管理会社によると、民泊停止後、借り主は早々に部屋を引き払ったという。ただ、理事長の男性らは最後まで借り主と接触できずじまい。一体、どんな人間だったのかいまもって分からないという。

 男性は言う。「家主と顔を合わせなくても泊まれるなら、宿泊客は隠れて何だってできる。これから民泊がやりやすくなるということは、それだけ犯罪に悪用される危険も増えるということではないのか」

 (添田隆典)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報