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【暮らし】

物忘れ増えた……認知症? 肝性脳症かも

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 高齢者が物忘れをするようになると、認知症を疑いがち。ところが認知症の治療をしても改善しないことがある。こうした場合、肝機能低下が招く合併症「肝性脳症」の可能性がある。症状の一部が認知症と似ており、混同しやすいのだという。物忘れの原因の判別がつかない場合、専門医は「内科で肝機能検査も考えてみて」と話している。 (白鳥龍也)

 神奈川県内の女性(81)はもともとC型肝炎の治療を受けていたが、二〇一五年五月に敗血症を発症して入院した。以前から、つじつまが合わないことを言うことがあり、家族は認知症を疑っていた。入院後はしきりに「(亡くなった)お父さん(夫)が会いに来た」と話すなど、幻覚の症状も現れた。認知症の進展を心配していたところ、医師から「肝性脳症も併発している」と告げられ、女性は間もなく昏睡(こんすい)状態に陥った。治療と療養の結果、半年後に退院して現在は落ち着いているが、入院中のことは全く覚えていないという。

 奈良県立医科大消化器・内分泌代謝内科の主任教授、吉治仁志さんによると、肝性脳症は主に、肝臓が持つアンモニアの解毒機能が衰えることで起きる。体に有害なアンモニアは、腸で食物中のタンパク質が分解される際に発生。肝炎が悪化し肝硬変になると、腸から血液で運ばれてきたアンモニアが十分解毒されないまま脳に達する。腸からは、機能が低下した肝臓を迂回(うかい)する血液の流れも生まれるため、さらに血液中のアンモニア濃度が上がり、脳にダメージを与える=図。

 肝硬変患者の三〜四割が肝性脳症を併発するとされ、再発率も高い。症状としては、物忘れや昼夜のリズム逆転などに始まり、中程度で幻覚や興奮状態が現れ、重症になると昏睡に至る。初期症状は、認知症やうつ病の症状と似ているため、見過ごされる場合も。吉治さんは「心療内科や精神科で物忘れなどの原因の判別がつきにくかった場合、内科医による肝機能検査も考えるべきだ」と話す。

 肝性脳症の治療薬として最近、注目されるのが難吸収性抗菌薬。腸内でアンモニアを生産する細菌に作用し、アンモニアを元から減らす効力を持つ。一九八五年にイタリアで承認された難吸収性抗菌薬が、日本でも二〇一六年にようやく販売承認、保険適用され、一般の治療に使われるようになった。吉治さんは「錠剤で服用しやすい。他の悪玉菌にも作用して腸内環境を整えるため、全身の健康状態改善にも役立つ」と話す。

 肝性脳症の原因となる肝炎は、認知症と同様、高齢者ほど多い病気だ。慢性肝炎の約七割を占めるC型肝炎の感染率は年齢とともに緩やかに上がるが、六十歳以上で急上昇し、百人中一〜二人となるとの調査がある。

◆ビフィズス菌、アルツハイマーを抑制か 森永乳業が試験結果発表

 腸と脳の関係では、腸内環境を守る善玉菌のビフィズス菌が、アルツハイマー型認知症の発症を抑える可能性があるとの試験結果を森永乳業が発表している。

 試験では、アルツハイマーの原因物質と考えられるタンパク質、アミロイドベータを脳内に投与したマウスを用意。ビフィズス菌A1を1日10億個、10日間にわたり与えたグループと生理食塩水のみのグループに分けて行動を分析した。

 結果、ビフィズス菌を与えたグループの方が、迷路で迷う回数が少ないなど空間認識、学習・記憶能力が勝っていると判明。脳組織の遺伝子解析でも免疫異常や炎症が抑えられ、正常なマウスに近いと分かった。

 「ビフィズス菌で腸内細菌が整えられている状態が、脳内の炎症抑制などにつながると考えられる」(森永乳業研究本部)という。

 

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