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【暮らし】

<Life around the World> 通学、安全に心地よく

 もうすぐ新学期。来月には、ランドセルが大きく見える新1年生も仲間入りする。日本の通学風景といえば、集団登校や通学路での見守りが思い浮かぶ。子どもの安全最優先は各国共通だが、海外では珍しい通学手段もあるようで。

街中の県道を走る通学馬車

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◆フランス 馬車に揺られ笑顔に

 フランス南部、アビニョンに近いサンティレール・ドジラン村。学校に向かう児童を乗せた、二頭立て馬車の音が朝を告げる。

 約四十五分で村中心部と郊外の新興住宅地を二度まわり、計四十人を乗せていく。馬車に揺られ会話も弾む。「宿題やった?」「そのかばんかわいいね」。五年生のアナイス・パルナンさん(10)が言う。「毎日、学校に行くのが楽しいの」

 村では二〇一五年から遠くに住む児童の安全のため、保護者の同伴に代わって使い始めた。これまで、校門前の県道は子どもを送りに来た車で大混雑。給食のため校舎から離れた食堂への往復に馬車を使ってきたが、登校にも使うことにした。下校時間がばらつく夕方は、保護者が迎えに来る。

助け合って馬車から降りる児童ら=いずれもフランス・サンティレール・ドジラン村で

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 通学路は、一周約三キロ。日によってブドウ畑の間を通ったり、中世の遺跡横で止まったり。「馬車からは季節の移ろいがよく分かる。村を知ることで、地域に愛着も深まるはず」。御者のドゥメ・ラクロワさん(50)は期待する。

 学校に到着すると、体の大きな高学年が低学年児童の下車を手伝う姿もおなじみになった。「助け合うことで、子ども同士に連帯意識が芽生えた気がしますね」と校長のクリスティン・マルティさん(45)は言う。

 馬車の費用は一食〇・五ユーロ(約六十五円)の給食費値上げや地元企業の寄付などで大半を確保。村の支出増は最低限に抑えた。祭りで有料乗車体験をするなど稼ぐ仕組みも検討中だ。

 「お年寄りは子どものころを思い出し、大人は朝の忙しい時間に安心して子どもを任せられ、子どもたちも楽しい。馬車はみんなを笑顔にする存在なんです」。ティエリー・セナティエンポ村長(55)が誇らしげに言った。

 (フランス南部サンティレール・ドジラン村で、竹田佳彦、写真も)

父(左)が運転するスノーモービルに乗り登校する児童

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◆米国 車禁止スノーモービル滑走

 朝8時ごろ。甲高いエンジン音を響かせたスノーモービルが続々と学校に集まってくる。親が運転するモービルの後部座席には、ヘルメットをかぶった児童。慣れた様子でさっそうと降り立ち「じゃあね」と親に手を振ると、ヘルメットを小脇に教室へ。厚めの防寒ジャケットと相まって、さながらレーサーのようだ。

 米ミシガン州の北部、ヒューロン湖に浮かぶマキノー島は、スムーズな往来と景観を重視して警察と消防車両以外、市民の乗用車所有が法で禁じられる。交通手段は馬車と自転車、冬はスノーモービル。住宅街には車ではなくモービルが並ぶ。「車の走らない街」と珍重され、夏には米国有数のリゾート地としてにぎわう。

中心街の路上には駐車中のスノーモービルや往来する馬車以外、乗用車の姿はない=いずれも米ミシガン州マキノー島で

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 5〜12歳の児童・生徒が通うマキノー島公立学校の生徒数は計71人。冬の間、子どもたちは親が運転するスノーモービルで通学する。小学2年のスティーブン君(8つ)は「スクールバスには乗ったことがないけど、こっちの方がかっこいい」と得意げだ。

 人口約500人の小さな島は、住宅街と学校、中心街が約5キロ圏内に集まる。雪のない夏季は徒歩か自転車通学となる。スティーブン君は「スノーモービルは速いし、とっても快適だよ」と笑った。

 スノーモービルの後ろに引いたそりに子どもを乗せる親もいるが、安全のためモービル本体に2人乗りをするケースが多い。その年の降雪により時期は変わるが、だいたい11月中旬から4月中旬までの間、街をモービルが行き交う。

 島のボブ・ローフ教育長(32)は「速度は30キロに制限されている。通学でスノーモービルによる事故があったことはない」と話す。「携帯電話を片手に運転する車がいないのは、何よりも安全だ」

 (米ミシガン州マキノー島で、石川智規、写真も)

送迎の順番や運転手の顔も表示されるアプリ

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◆中国 アプリが救世主!? 相乗り快走

 「いってきまーす」。スマートフォンから、わが子の元気な声が聞こえる。アプリを使えば学校前や車内の様子をライブ映像で確認、現在地も衛星利用測位システム(GPS)で地図に表示される。中国のベンチャー企業、北京小伴科技有限公司が開発したスマホアプリは子どもの送迎に悩む親の思いから生まれた。

 二〇一五年創立の同社の創業者は三人とも共働き。都市部の学校のほとんどが「成人が送り迎えしなければいけない」という規則があるため、夫婦どちらかが仕事を中断する必要に迫られた。創業者の一人、楊徳〓(ようとくきん)さん(39)は「中国人の生活の質や自由度を上げるために、先進技術を活用しよう」と思い付いた。

 中国は共働き家庭が八割を占める。誘拐事件も十年ほど前までは年一万件と多発。最近は減少したが、一人っ子政策の影響も残り、子どもの安全への意識は高い。ただ、スクールバス整備は遅れ、定員を数倍オーバーする児童を乗せて摘発される例も相次ぐ。都市部は送迎の自家用車で渋滞が起き社会問題化している。

北京市内の小学校前は下校時、多くの父母や祖父母などであふれる=いずれも北京市で

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 登録は同社ホームページに自分の住所と学校名、携帯番号を入力し、同社が相乗りサービスなどの車を手配。基本は学期単位で車や運転手は固定され、例えば五キロ往復で一カ月千三百元(約二万一千円)程度という。登録者はすでに一万人を超えた。

 スマホ利用の別の配車アプリとの違いは「親の安心感を重視した」(楊さん)こと。同社は運転手の経済状態や犯罪、違反歴、運転技術を厳格に調査。同社へのアプリ使用料10%以外は運転手の収入になり、質の高い運転手をそろえる。今年下半期は共働きで裕福な家庭が多い上海、広州、深センなどの大都市に進出する計画だ。 (北京・安藤淳、写真も)

※〓は金の下に金がふたつ

 

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