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【暮らし】

<わが家のケア手帳>一緒に歌を歌う 認知症の母、生き生き

駐車した車の中で美空ひばりの曲を口ずさむ鳥飼憲一さん(左)と妻の美津代さん=愛知県常滑市内で

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 認知症の親や配偶者の介護はストレスを感じることも多いが、本人も家族も穏やかな気持ちで、楽しい時間を過ごしたい。童謡など、共通して知っている歌を一緒に歌うと、互いの感情が落ち着き、家族としての絆を深められることがあるという。 (河郷丈史、出口有紀)

 「こがねむしーはーかねもちだー」「かーらーすーなぜなくのー」

 東京都文京区の竹内久枝さん(70)は、昨年九月に九十二歳で亡くなった母を約八年間、自宅で介護した。「黄金虫」や「七つの子」などの童謡を一緒に口ずさむことが日課で、体験談を本紙に寄せた。「歌ってあげると、母はうれしそうな顔をした。私の気持ちも和らぎ、救われた」と話す。

 母が認知症と診断された後、久枝さんは「母に生き生きと暮らしてもらうにはどうすればいいか」と、メモ帳に絵や文字を書いてもらったり、お手玉やおはじきで遊んだりしたが長続きしなかった。その中で、母がよく童謡を歌っていたのを思い出し、歌集をコピーして一緒に歌ってみると、楽しそうに歌い、自分から「童謡を歌おうよ」と言うこともあった。

 夜中に「火事だ」と叫んで近所に知らせに行こうとするなど、久枝さんは困らせられることもたびたびあったが、歌うと気持ちが安らいだ。互いに知っている歌を歌うことで、母と子がつながっている気がしたという。

 母が衰弱して次第に声が出せなくなっても、久枝さんは耳元で歌い続けた。亡くなった朝、かすかにほほ笑んだような顔が今も忘れられない。「心残りはない。いい形で逝ってもらえた」

 愛知県大府市の鳥飼憲一さん(71)は、認知症で要介護3の妻美津代さん(69)を乗せて海や山へドライブに出掛けながら、「愛燦燦(さんさん)」「川の流れのように」など美空ひばりさんのヒット曲を二人で歌う。

 病気になるまではカラオケにも行ったことがなかったという美津代さんだったが、二年前にひばりさんの「港町十三番地」を突然歌い始め、憲一さんはヒット曲集のCDを車内でかけるようになった。美津代さんは車の中でずっと歌い続けることもあるし、機嫌が悪くても憲一さんが歌い始めると落ち着いたり、手拍子をしたりすることもある。

 「明るい気分になれるからかな。私も楽しいから歌う。あんまり上手じゃないけど」と憲一さんは笑う。

◆「親子の絆も再確認」

 歌と介護の関係について、家族介護者のケアに詳しい東海大教授で精神科医の渡辺俊之さん(58)に聞いた。

     ◇

 童謡の良さは世代を超えて親子でも歌えること。認知症が進んでも古い記憶は残っており、親は幼いころの幸せな時代を思い出せる。子どもは一緒に歌うことで親子の絆を再確認でき、互いに気持ちが安らぐのでは。童謡に限らず、同世代の夫婦が共通して知っている歌なども、似た効果があると思う。本人が知らない歌でも、テンポがゆっくりなら落ち着くかもしれない。

 認知症の人は、相手の表情や声のトーンには敏感。介護が大変でイライラしたりすることがあっても、穏やかな旋律の歌を一緒に歌えば、自然と声や表情は和らぐ。そうすれば認知症の人の感情も落ち着き、結果として介護する側も救われる。

◆体験談を募集

 日々の介護の知恵、工夫について体験談をお寄せください。ファクス=052(222)5284、メール=seikatu@chunichi.co.jp、郵送の場合は〒460 8511(住所不要)中日新聞生活部へ。「わが家のケア手帳」は随時掲載します。

 

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