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【暮らし】

<ともに>グループホーム世話人(中) どこまで仕事 線引き曖昧

4年前に亡くなった男性の写真を見せながら、グループホームの入居者らと話す世話人の大木亜季さん(右)=名古屋市中川区で

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 「亡くなるなんて、まったく想像していなかった」。知的障害のある人たちが暮らす名古屋市中川区のグループホーム「シャローム花塚2号ホーム」で世話人をしている大木亜季さん(39)は、二〇一四年六月に亡くなった入居者の男性=当時(43)=をしのび、目に涙を浮かべた。

 大木さんは約二十年前、ホームを運営する社会福祉法人「さふらん会」で、正職員の世話人として働き始めた。男性とはそのころからの付き合いだ。一〇年に設立されたホームに男性が入居してからは、月に十日以上泊まり勤務をこなし、家族のように一層親しくなった。

 男性は知的障害があり、心臓の持病もあった。調子が悪くなったのは、ちょうど大木さんが泊まりの日だった。

 夜九時ごろ、男性が飲んだ水が、逆流して鼻から出てきた。「いつもと様子が違う」。夜間救急病院に連れて行ったが、男性の容体は悪化し、顔はみるみる青紫色に。集中治療室に入院したが、三日後、大木さんらがみとって息を引き取った。死因は誤嚥(ごえん)性肺炎だった。

 亡くなる一週間ほど前には、足がむくんで横になると苦しがる症状もあった。病院に行くと、医師は「問題ない」と、徒歩などの運動をさせるように言われた。その通りに、男性をなるべくホームで歩かせるようにしていた。「亡くなった原因は分からないけれど、歩かせて余計に体調が悪くなったのではないかと自分を責めた。周囲からもホームでの生活が原因ではないかと、責められているような気がした」。大木さんは声を落とす。

 男性の両親は既に亡くなり身寄りはなかった。男性の遺体をホームに移し、他の入居者らとお別れ会をして火葬した。遺骨は、島根に住む遠い親戚が引き取った。今もホームの壁には、男性の笑顔の写真が張られている。

 世話人には医療や介護の資格は必要とされておらず、大木さんも看護師などの資格を持っているわけではない。だが、入居者の体調が悪いと思ったら病院に連れて行き、薬を飲ませるなど命に関わる仕事をする。「万が一のときも、素人判断で対応するしかない。その人の普段の様子をどれだけ知っているかが、異変に気付くためには一番大事だと思う」と大木さんは言う。

 入居者本人だけでなく、その家族も高齢化しており、「親亡き後」への対応も迫られる。現在、ホームには四十〜五十代の男女六人が入居。皆、障害支援区分は最も重い「6」かそれに次ぐ「5」で重度の知的障害がある。

 ある女性(50)は昨年十二月に、父親を亡くした。女性と父親は、他の家族とは疎遠だったため、四年ほど前に女性の父親が入院した時には、大木さんが二日に一回、病院に行き洗濯をした。父親の死後、大木さんは女性と一緒に葬儀に参列。その後、父親の財産の手続きで女性の印鑑証明書が必要となり、大木さんは女性に付き添って役所にも行った。

 世話人の仕事内容は定められているわけではなく、マニュアルはない。どこまでやるべきなのかという迷いは常にある。仕事とプライベートの線引きも曖昧になりがちだ。しかし、大木さんはこう話す。「信頼関係を築いてきた入居者やその家族が困っているのを見ると、やっぱり放ってはおけない」

 (細川暁子)

 

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