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【暮らし】

<年金プア 不安の中で>77歳男性 妻と2人で月約16万円 物価上昇率ほど増えず

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 物価の上昇に年金が追いつかず、年金受給額の少ない年金プアの人たちが不安を募らせている。かつては「物価上昇の分だけ公的年金の年金額が増える」が常識だったが、年金制度の見直しで物価と年金額の関係が一変した。今後は、物価上昇率ほどには年金額は増えないことを覚悟せねばならない。 (白井康彦)

 「近年は物価が上昇しても、年金は上がらないのでは」。東海地方に住む七十七歳の男性は最近、そう感じ始めている。六十五歳から年金生活を始め、二〇一七年度の年金受給額は約百十七万二千円。五年前と比べると、消費者物価が4%ほど上昇したにもかかわらず、年金受給額は増えるどころか1%ほど減ったためだ。昨年の消費者物価の総合指数も前年比0・5%の上昇だったが、ことし四月からの年金受給額は据え置かれる。

 背景には、苦しい年金財政がある。長寿化が進み年金受給者は増える一方、制度を支える現役世代は減り続けているため、政府は年金額を抑えようとする政策を進める。年金生活者の実質的な手取りは目減りし、男性も「生活は年々、苦しくなっている」と話す。

 男性は、一歳年下の妻と二人暮らしで、年金額は二人合わせると月約十六万円。自らが所有する古い一戸建て住宅に住んでいるため家賃は不要だが、介護保険料や税金、医療費で約二万円かかるので約十四万円で生活している。男性は皮膚科、内科、眼科、歯科を受診中。多少遠くてもバスは使わず自転車で通う。「節約せねばならないので…」。妻は食費の節約に懸命で、夫婦とも下着以外の服は数年間ほとんど買っていない。

 受給記録を見て男性が最近、気がついたのは、介護保険料の大幅上昇だ。五年前は約五千円だったが、今は約六千三百円だ。今後も上がり続ける可能性は高い。物価に加え、介護保険料の上昇も生活を圧迫する。男性は「社会保険料の上昇も年金額の改定に反映させてほしい」と訴える。

◆「今後も目減り続く」

 消費者物価と年金額の関係を見るために、総合指数と老齢基礎年金の満額の年金額の推移を比べてみた=グラフ参照。総合指数は一九九五年平均を、年金額は九五年度をそれぞれ一〇〇とした。

 毎年度の年金額の改定率は、消費者物価指数や賃金の変動率などから厚生労働省が算出している。ただ、その時々の経済情勢や景気への影響などを勘案して、計算通りに決められなかったこともある。

 二〇〇〇〜〇二年度は物価が下落したにもかかわらず、年金額は特例で据え置かれた。その後も、計算で決まる本来の水準(本来水準)よりも高い水準(特例水準)で年金が支給されていた。

 ただ、このままでは年金財政の破綻を招きかねない。年金制度を支える現役世代の負担を軽くするため、政府は〇四年に、現役世代の人口減少と平均寿命の延びを勘案して年金水準を抑える「マクロ経済スライド」を導入。一三年度からは段階的に「特例水準」を解消した。

 マクロ経済スライドは物価がそれほど上がらない時は適用されないが、消費増税で前年に物価が上昇した一五年度に初めて適用。「特例水準」の解消も重なり、一二年度に比べ物価は4・1%上昇したが年金は0・8%減額された。政府や日本銀行は今後、2%の物価上昇率をもくろんでいる。思惑通りに物価が上昇すれば、マクロ経済スライドが適用され、今後も年金額の上昇は抑えられる可能性が高い。

 名古屋市の社会保険労務士の高木隆司さんは「今後は物価上昇に見合う年金額の引き上げは期待できない。大事なのは名目の年金額ではなく、物価の変化率を加味させた実質的な年金額。今後はその目減りが続くことを覚悟して生活設計すべきだ」と強調している。

 

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