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【暮らし】

訪問介護利用制限に懸念 「独居」「老老」世帯の生活援助枠

イラスト・えび ほたて

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 二〇一八年度の介護報酬改定で、利用制限が懸念されているホームヘルプ・サービス(訪問介護)の生活援助。一人暮らしや「老老介護」の高齢者世帯を支えるサービスとして定着しており、利用者団体などから「生活が立ちゆかなくなる」と、運用の見直しを求める声が強まっている。 (白鳥龍也)

 「独居かつ徘徊(はいかい)、振戦(しんせん)(ふるえ)があり、食べこぼしが多く、毎食後掃除する。食事形状も調整しないと食べないため毎食、調理している」「認知症で食事摂取について心配あり。また、失禁等の心配もあり、家族も遠方で週末日帰りの支援しか見込めない」

 これは、生活援助中心の訪問介護を月に九十回以上、一日に三回以上利用しているケースの実例だ。厚生労働省が市区町村に聞き取りし、昨秋公表した。四十一市区町村から四十八例が報告されたが、このうち市区町村側が「適切でない」、つまり「ムダ」と判断したのは二例のみ。残りは「適切またはやむを得ない」支援だとした。

 最初に生活援助の利用抑制を提起したのは財務省だ。昨年十月、財政制度等審議会の分科会に提出した資料では、一六年時点の生活援助サービス利用者約四十八万五千人の「一人当たり平均回数は月十回程度」と指摘。一方、月三十一回以上が約二万五千人おり、中には百回超の例もあるなど「効率的なサービス提供が行われていない可能性がある」と決め付けた。

 実は、利用者側の立場で介護保険の在り方を論議すべき厚労省社会保障審議会介護保険部会でも一六年には、学識者ら一部の委員から「自立支援につながらない生活援助をやっているのではないかという疑念がある」「だらだらと生活援助が続くのは解消していくべきだろう」といった意見が噴出。厚労省側も目をつぶるわけにはいかなくなり、サービス抑制へと傾いた。

 しかし、保険の運営者である市区町村でさえ必要と認めるサービスを制限しようとしていることに、現場関係者の反発は強まる一方。利用者側を代表して介護報酬改定案を審議する社会保障審議会介護給付費分科会の委員を務めた「認知症の人と家族の会」副代表理事の田部井康夫さんは「財務省の方針を覆すことができなかったのは非常に残念。生活援助は認知症の進行を緩やかにする側面もあり、利用制限はそうした生活の大きな妨げになる。(要介護者を住み慣れた地域で支える)地域包括ケアシステムの考え方にも反する」と、運用撤回を強く要求する。

 市区町村に生活援助の回数などケアプランを届けることになるケアマネジャーの立場から、日本ケアマネジメント学会理事の服部万里子さんは「ケアプランを全国平均の数で管理するのはケアマネジメントの専門性の無視に通じる。市区町村ににらまれたくないと(利用者の立場から外れて)届け出前にサービスを減らす自己規制も出かねない」と危惧する。 

<生活援助の利用抑制> ことし10月から、ケアマネジャーが基準の回数以上の生活援助中心型訪問介護を提供する場合、市区町村へのケアプランの事前届け出を義務付ける。基準について厚労省は、直近1年間の全国平均の利用回数を基に、1カ月当たり要介護1で27回、要介護3で43回などとする方針。4月17日までパブリックコメントを行った後、正式決定する。市区町村にはプランの検証を求め、必要に応じて是正を促すことができるようにする。生活援助はホームヘルパーが高齢者宅を訪れて行う掃除やゴミ出し、調理、買い物など、日常生活を支援する介護保険サービス。

 

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