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【暮らし】

診断書 障害年金を左右 専門家や付き添い 症状伝えるすべ必要

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 病気やけがで働けなくなった際の生活を公的にサポートしてくれる障害年金。ただ、資格を満たしたと思い込んでいても医師の診断によって受給できないケースが多く、不服申し立てが多発している。医師によって診断書の内容が大きく変わる例もあり、症状を正確に伝えるすべが必要だという。(添田隆典)

 千葉県内に住む四十代の男性は二〇一四年、過去二年間受給してきた障害基礎年金を打ち切られた。

 受給を始めたのは一二年八月。〇九年、脳出血で倒れ、失語症の後遺症となり営業の仕事が続けられなくなったことがきっかけだった。リハビリのため東北地方の実家に戻っていたころ、障害年金の受給資格があることを知った。

 男性は初診日の時点で国民年金に加入していたため、年金法による障害等級二級以上で障害基礎年金が受給できる。地元の医師が作成した「言語障害」の診断書を基に日本年金機構の審査を受けた結果、二級の判定が出たため、毎月約六万五千円の障害年金を受け取っていた。

 しかし、一四年、二年ごとの更新のため、再び診断書を年金機構に提出したところ「三級より軽く、障害に該当しない」と審査され、支給が停止された。二年前は「誰が聞いても理解できない」だった会話レベルが、このときに出した診断書では「電話による会話が家族は理解できる」に変わっていたためだった。

 男性は当時、再就職を目指して東京都に居住。一人訪れた都内の医療機関で診断書の作成を依頼した。知人が付き添い、日ごろの状況を説明してくれた地元の医療機関での診察とは違い、その医療機関では第三者のサポートはなく、医師とのやりとりもほとんどなかったという。脳出血の後、一年半通ったリハビリ科医にはこれ以上の改善は見込めないと告げられ、自分でも症状が上向いた実感はなかった。医師の診断に疑問を感じたが、口を挟むのもはばかられた。

 その後、社会保険労務士のサポートを受け、医療機関で医療ソーシャルワーカーに付き添ってもらったところ、男性は「重い言語障害の可能性がある」と診断され、年金機構に診断書を提出。現在、審査中だ。それまでは「症状は軽い」と判断されたため、診断書を書いてもらうことを断念したケースもあったが、ソーシャルワーカーが、医師に日常生活での男性の状況を説明してくれたことが大きかった。

 男性は一五年に障害者枠で都内の企業に雇用されたが、手取りは月約十五万円。「障害年金がもらえないと、生活は厳しい」と審査結果を待ち続けている。

◆生活状況の把握 医師も困難

 厚生労働省によると、一六年度に社会保険審査会が受け付けた障害年金に関する審査請求(不服申し立て)は八百二十一件と、国民年金全体の九割を超える。厚生年金でも六割強だ。

 内容の内訳までは公表されていないが、障害年金に詳しい横浜市の社会保険労務士、相川裕里子さんは「診断書が適切に書かれていないと感じている人は一定数いるだろう」とみる。

 障害年金の診断書には、本人の日常生活の状況を医師が記入する項目がある。たとえば、精神障害の場合、「適切な食事」や「金銭管理と買い物」といった設問について、「できる」や「助言、指導が必要」など四つの選択肢から回答する必要がある。

 しかし、医師が患者の日常生活まで把握するのは容易ではなく、主観に頼らざるを得ない面もある。一方、患者の側も医師の前では、元気にふるまおうとする傾向があるという。

 このため、「まずは病状を正直に申告することが大事になる」と相川さん。より正確性を期すなら、診察を受けるまでの生活状況を具体的に記録し、医師に見せる方法もある。一人で難しければ、家族などに代筆してもらったり、診察時に付き添ってもらったりしてもいい。

 身近にサポートが得られない場合、有料だが社労士など専門家に申請を依頼する手もある。受診先の医療機関に患者の経済問題などをサポートする医療ソーシャルワーカーがいれば、相談や医師との仲介に無料で応じてくれる場合もある。

 

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