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【暮らし】

<食卓ものがたり>鮮烈な酸味、皮ごとどうぞ 片浦レモン(神奈川県小田原市)

相模湾を望む斜面で栽培されている「片浦レモン」と園主の岩本恭一さん=神奈川県小田原市で

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 相模湾に向かって落ち込む斜面の上、常緑の葉の間に散らばる黄色の実が、木漏れ日のように揺れていた。神奈川県小田原市根府川(ねぶかわ)のレモン園。「ことしは寒さで少し玉伸びが悪くて」。園主の岩本恭一さん(66)が、慎重に収穫ばさみを使う。根府川など市西部の片浦地区では、温暖な気候と日当たりの良い斜面を生かし、かんきつ類栽培が盛ん。特産の一つが「片浦レモン」だ。晩秋から約半年続く収穫は後半の繁忙期を迎えている。

 塩レモン、レモンサワー、レモンカレー…。フライや焼き魚に搾りかけるだけではないレモンの使い方が広がり、今や一種のレモンブーム。中でも人気は、防かび剤の使用がなく皮ごと食べられる国産レモンで、全国の収穫量はこの二十年で約四倍に。主産地は瀬戸内地方だが、片浦レモンは「とりわけ香りが強く、量も少ないため幻のレモンと呼ばれています」(岩本さん)。かつてかんきつ類栽培の北限とされた当地の適度な寒暖差が優れた品質の秘密とか。

 片浦レモン栽培はミカンの価格低迷、輸入レモンの農薬不安を背景に約四十年前から本格化。年一回以下の農薬使用基準を自主的に設け、ファンを増やしてきた。農家の高齢化とともに生産量は約三十トンとピーク時から半減する厳しい現実もあるが「希望の光」も。

 市内若手農業者や二宮尊徳を祭る報徳二宮神社宮司らが、地元かんきつ類の振興を図る会社「小田原柑橘(かんきつ)倶楽部」を設立。昨年は耕作放棄地二ヘクタールにレモンの苗木六百本を植えた。石井久喜(ひさよし)代表(45)は「需要は多いのに特産が廃れるのを見ていられない。六十トン生産の回復を目指す」と鼻息も荒い。

 岩本さんからもらった取れたてレモンを、お気に入りの焼酎のロックにギュッと搾って飲んでみる。鼻に抜ける鮮烈な酸味。心地良い酔いが回った頭に、人生の楽しさとほろ苦さが幻のように交錯した。

 文・写真 白鳥龍也

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◆味わう

 レシピ本の著作が多数ある管理栄養士の柴田真希さん(36)によると、レモンの健康効果の中でも「酸味のもと、クエン酸がカルシウムの吸収を助ける働き(キレート作用)は見逃せません」。これを利用した、骨を丈夫にする家庭料理では、酢の代わりにレモン汁を使う「いわしとまいたけのレモン寿司(ずし)」=写真=がお勧め(レシピは料理名で検索)だ。

 小田原柑橘倶楽部は、片浦レモンの加工品として、サイダー、生ようかん、ジェラートなどを地元の土産店などで販売中。問い合わせは同倶楽部(報徳会館内)=電0465(23)3246。

 

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