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【暮らし】

<家族のこと話そう>「双子の経験」作品に 人形アニメ作家・村田朋泰さん

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 生まれ育った西日暮里と隣の谷中、千駄木の辺りは、東京の中でも時間がゆったりと流れています。そんな環境で、私と双子の弟、さらに下の弟二人という四人兄弟はわんぱくに育ちました。母(洋画家の村田英子さん)は、子どもたち相手に「勉強しなさい!」と怒ってばかりで大変でした。でも、本当はよく笑う明るい人。怒っていても私たちがふざけて笑わせようとすると、つられて笑ってしまうことも。

 父は会社を早期退職し、町内会長を務めるなど他人のために汗を流してきた。「自分のやりたいことを極めろ」と、子の進路選択のよき応援者でもありました。

 絵が得意で美大に行きたかったけれど九人の兄、姉がいてあきらめたという母が、私たち双子を三、四歳のころから絵画教室に通わせたのが、私の仕事につながります。母もその後、その教室で学び、画家になりました。

 双子の弟は、数年で教室をやめてしまいましたが、私は勉強を続けて漫画家になりたいと思うように。双子といえども、性格は反対。社交的で友達が多い弟に対して内向的な私には、一人でこつこつと打ち込める絵描きが合っていたのだと思います。

 漫画を描くうちに物語の流れの方に興味が移り、映像作家や映画監督を目指します。でも、大所帯による一般の映画作りはやはり性に合わないと思い、大学時代、人形浄瑠璃やチェコの人形映画を見たのをきっかけに、基本的に一人で完結できるコマ撮り人形アニメを作り始めました。

 私が作品で喪失感や死生観を描くのも、双子であることが影響しています。双子の弟は同じ遺伝子を持っているのに自分とは別の道を歩み、知らない世界を持っている。そのことは、外見が同じという、目に見えるものだけが全てではないと気付かせてくれた。この世とあの世、生と死、因果関係といったことに関心が向くわけです。

 母は同時に絵を学び始めたライバルでもありますが、互いを尊重してほとんど批評はしません。母は、神奈川生まれなのにスキーの全国大会に出場した経験があるパワフルな人。描く絵も、聖書や神話の世界に登場する宿命を背負った女性を、鮮烈な色彩で表現した作品が多い。

 私が人形で柔らかな幻想的な世界を描いているのは、これもおのずと「対極に行こう」との意識があったのかもしれません。しかし今、たまに実家に集まって話せば、母にしろ弟にしろ、人生観が似通った点が見つかる。これもまた家族だから、この家族がいて今の自分があるんだな、と思わされます。

 聞き手・白鳥龍也/写真・由木直子

<むらた・ともやす> 1974年生まれ。東京芸術大卒。人形を少しずつ動かしながら撮影した画像をつなげていくアニメーションを制作。人形の表情としぐさのみで独自の世界観を描いている。Mr.Childrenの音楽ビデオやNHK番組で活躍。東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで代表作の特集上映を開催中。

 

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