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【暮らし】

やる気、総合力アップ 願いましては… そろばん効果 ご明算

一心に玉をはじく青山瑞歩君(左)と高橋杏美さん=東京都中央区で

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 昔から子どもが身に付けるべき学力として言われてきた「読み、書き、そろばん」。しかし、電卓やIT(情報技術)の普及で「そろばん」は押され気味。だが、教育の現場では必ずしもさにあらず。昨年3月に改定された文部科学省の学習指導要領に記す「そろばん」の記述は、改定前より充実している。その理由を探ろうと、近年、急成長をとげているというそろばん塾を訪ねた。 (三浦耕喜)

 「願いましては…」「三を引けない時は…」「よくできたね!」。東京都中央区のビルの一室。そろばん教室「いしど式・石戸珠算学園」(本部・千葉県白井市)の「東日本橋教室」に入ると、二十人ほどの子どもたちが指導を受けていた。常に三、四人の指導員が子どもたちを見て回る。分からない子はまっすぐ手を挙げ、すぐにアドバイスを受けていた。

 幼稚園児もいて、総じてにぎやかだ。記者も小学生の時にそろばん塾に通ったが、しーんとした中で玉をはじく音だけが響いていたのとは隔世の感だ。

 「子どものやる気を引き出すには、とにかく楽しく親しんでもらわないと」と言うのは、指導に当たる直営事業部主任の大久保茜さん(27)だ。

 本当に楽しい? 都内中央区から通う小学三年の青山瑞歩君(8つ)は「教室に入った時は幼稚園に通っていたので、算数も分からなかったけど、計算が合った時にすごく気持ち良かった。そろばん以外の力も付く。自信が出るので、他の授業でもどんどん発表するよ」。

 なんともハキハキした答え。聞けば珠算五段、日本珠算協会の大会で、読み上げ算日本一になったという。その腕前にあやかろうと、思わず握手を求めた。

 千代田区の中学一年、高橋杏美さん(12)は「楽しくやっているうちに、玉をはじく音が好きになった。他の教科でも集中力が付いたけれど、特に算数や数学は計算が早くなった」と笑顔。三桁同士の掛け算もそろばんでこなす。

 「今やそろばんは単なる『計算の道具』ではありません。子どもたちの能力を開く重要なツールです」。そう言うのは、いしど式の運営会社「イシド」の沼田紀代美代表(48)だ。「なぜなら、そろばんは『やればできる』と自分を肯定する気持ちをもたらしてくれるからです」と言う。

 実際、脳科学では、指を動かすことと脳の発達は強く関係していることが分かってきた。そろばんは目で見て頭で考え、指先を素早く動かして答えを求める。だから「そろばんで身に付くのは『計算力』だけではありません。集中力や記憶力、判断力など総合的な力が身に付きます」と沼田代表。青山君や高橋さんはそれを実感しているわけだ。

◆文科省も着目

 国もその効果に着目。小学校の旧学習指導要領では、三、四年生で「簡単な足し算、引き算ができる」としていたが、昨年三月に改定された新要領では「思考力、判断力、表現力等を身に付けること」として「そろばんの仕組みに着目し、大きな数や小数の計算の仕方を考えること」と、考える力を養うツールとして活用する方向に軸足を移した。文科省の担当者は「子どもの教育にとって、そろばんは今もなお効果的との考えを表している」と言う。

 一九八〇年代には一万三千カ所を超えたそろばん塾は、現在は半分以下に。だが、沼田代表は言う。「そろばんは子どもの成長意欲を後押しする。子どもたちの『心を育む道具』と言えるのです」

 

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